グランドセイコーと伊勢丹新宿店によるコラボレーションモデルが、昨年に続き今年も登場しました。2024年は、手巻きスプリングドライブを搭載したドレッシーなエレガンスコレクション SBGY037が展開されましたが、2025年は一転、1967年に発売されたグランドセイコー初の自動巻きモデル62GSの意匠を現代的に再構築したケースデザインをベースに、独自のダイヤルカラーで個性を際立たせた1本に仕上がっています。
デザインのテーマは、1日のうちでわずか数分しか現れない黄昏時──“トワイライトタイム”。ダイヤルには繊細な放射状のテクスチャが施され、全面にピンクゴールドのトーンが与えられています。その表情は、夕暮れどきの新宿の空に浮かぶ、柔らかく移ろう光を想起させます。興味深いのは、ダイヤルだけでなく、針やインデックス、そしてGSロゴに至るまで、すべてがピンクゴールドカラーで統一されている点です。こうしたトーン・オン・トーンの構成はこれまでグランドセイコーで見たことがなく、とても新鮮に映ります。
デイト表示以外はすべてピンクゴールドカラーに統一されている。
ケースは直径40mm、厚さ12.8mm。ケースとブレスレットには、グランドセイコー独自の素材であるブライトチタンが用いられています。ステンレススティールに比べて約30%軽量でありながら、純チタンよりも明るい色味を持つこの素材は、ザラツ研磨が施されることによって、快適な装着感と高級感を両立させています。
内部に搭載されるムーブメントは、自動巻きスプリングドライブCal.9R65。1999年にセイコーが発表したスプリングドライブをベースに、自動巻き機構と約72時間のパワーリザーブを実現したムーブメントです。自動巻き機構には、1959年にセイコーが独自に開発した「マジックレバー方式」を採用。この構造により、巻き上げ効率の向上はもちろんのこと、生産性、メンテナンス性、そして耐久性の面でも優れた性能を発揮します。
Cal.9R65のブリッジとローターには波模様が施されている。
ケースバックは、既存の62GS現代デザインモデル同様、本作もシースルーバック仕様となっており、サファイアガラスの中央にはグランドセイコーの象徴である獅子のロゴがあしらわれています。ただし本作では、そのロゴがダイヤルと呼応するピンクゴールドカラーでプリントされています。
本作の限定本数はわずか35本。価格は税込104万5000円で、2025年11月8日(土)より販売開始される予定です。発売に先立って、7月9日(水)から7月15日(火)まで伊勢丹新宿店1階のザ・ステージで開催される「TOKYO TIME Grand Seiko」にて、先行予約が開始されます(詳細は後述)。
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ファースト・インプレッション
この時計の資料を受け取って、真っ先に頭に浮かんだのは──「グランドセイコーでこの構成って、本当にアリなのか?」という疑問でした。というのも、グランドセイコーといえば、“視認性の高さ”を特に重視するブランドです。ダイヤルと針に異なる色調を与え、明確なコントラストを確保することで視認性を担保してきた、という印象がありました。
その疑問を胸に、ブランドのデザイン哲学であるグランドセイコースタイルを読み返してみると、改めて気づいたことがありました。グランドセイコーは、ダイヤルや針の平面部分の面積を極力広く取り、そこに多面カットを施すことで、光の反射によって視認性を高めるという手法を採っていたのです。思い返してみるとグランドセイコーのシルバーダイヤルモデルでは、針やインデックスが同系色で構成されていていることがほとんどですが、視認性はしっかりと確保されています。
そして、僕の手元に実機がやってきたとき、その心配がまったくの杞憂だったことがすぐにわかりました。ピンクゴールドカラーのダイヤルに同系色の針やインデックスが配されているにもかかわらず、それぞれのエレメントはしっかりと視認でき、時間の読み取りに困る場面は一度もありませんでした。むしろ、光を受けて表情を変えるダイヤルと針のコントラストは、写真では伝えきれない奥行きを感じさせます。ピンクゴールドカラーと聞いて想像していたよりも、実際の色味はずっと豊かで、どこか夕焼け空のようなやわらかなオレンジの気配も漂っていて、まさにトワイライトタイムというテーマを見事に映し出しているように感じられました。
このテーマを表現した要素は、ダイヤルのデザインだけにとどまりません。もうひとつ強く印象に残ったのが、ムーブメントの選択です。ヘリテージコレクションの62GS現代デザインには、ハイビートのメカニカルムーブメントを搭載したモデルもラインナップされていますが、本作にあえてスプリングドライブを採用したのは、まさにこのトワイライトタイムという情緒的なコンセプトをより繊細に表現するためではないかと思うのです。
秒針がダイヤルの上を滑るように進むスイープ運針は、黄昏時の空がゆっくりと色を変えていく、その時間の流れの美しさを、静かに、しかし確かに可視化しているように感じました。
手首につけてみると、直径40mmのケースはほどよい存在感を放ちながらも、決して主張しすぎることはなく、手元にしっくりと収まります。ピンクゴールドトーンで統一された本作は、正直なところ最初の1本としては少しハードルが高いモデルなのではという印象を持っていました。ですが、ダイヤルの色味は、想像以上に柔らかく、肌に自然になじむ絶妙なトーンでした。撮影当日はカーキのオーバーシャツにグレーのポロシャツというスタイルで合わせてみましたが、違和感なく調和してくれました。もちろん、ネイビーのスーツのようなきちんとした装いにもフィットするでしょうし、白シャツやTシャツといったシンプルなコーディネートにも映えるはずです。
ここまで本作の特徴、ディテールや魅力をご紹介してきましたが、やはり時計の魅力は、実際に手に取ってこそ感じられるもの。そんな本作をいち早く体験できる機会が、7月9日(火)から15日(月)まで伊勢丹新宿店 本館1階〈ザ・ステージ〉で開催される「TOKYO TIME Grand Seiko」です。
会場では本作ヘリテージコレクション SBGA515の実機サンプルが展示され、ケースの質感やダイヤルの色味、針やインデックスの輝きなどを直に確認することができます。また、世界的フォトグラファー、グレゴリー・ハリスが東京の時の移ろいを切り取った作品もあわせて展示され、時計と都市が織りなす街ごとに異なる時の流れを五感で体感できる空間が演出されるそうです。詳細は以下をご覧ください。
【TOKYO TIME Grand Seiko】
■期間: 2025年7月9日(水)~ 7月15日(火)
■場所: 伊勢丹新宿店 本館1階 ザ・ステージ
■TEL: 03-3352-1111(代表)
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基本情報
ブランド: グランドセイコー(Grand Seiko)
モデル名: ヘリテージコレクション 伊勢丹新宿店2025限定モデル(Heritage Collection Isetan Shinjuku 2025 Limited Edition)
型番:SBGA515
直径: 40mm
厚さ: 12.8mm
ケース素材: ブライトチタン
文字盤色: ピンクゴールドカラー
インデックス: アプライドのバーインデックス
夜光: なし
防水性能: 10気圧(日常生活用強化防水)
ストラップ/ブレスレット: ブライトチタン製ブレスレット
Cal.9R65
ムーブメント情報
キャリバー: 9R65
機構: 時・分・秒表示、デイト表示、パワーリザーブ表示
パワーリザーブ: 約72時間
巻き上げ方式: 自動巻きスプリングドライブ
石数: 30
クロノメーター認定: なし
追加情報: 平均月差±15秒(日差±1秒相当)
価格 & 発売時期
価格: 104万5000円(税込)
発売時期: 2025年11月8日(土)
限定: 35本
追加情報: 7/9(火)~7/15(水)伊勢丹新宿1Fザ・ステージで 実施される「TOKYOTIME Grand Seiko」にて先行予約開始予定