12年ぶりの大改定。オメガ「月の裏側」が全モデル進化、手巻き新機軸も登場
オメガ(OMEGA)のスピリットを体現するシリーズ、「スピードマスター」。その中でも、「フルセラミック(全陶)」という特殊な素材感で、独自の路線を歩んできた「ムーンウォッチ・ダークサイド・オブ・ザ・ムーン(以下、ダークサイド)」が、2013年の登場から約12年を経て、ついに大きな節目を迎えました。
今回のモデルチェンジは、単なるマイナーチェンジではなく、「ムーブメント(機芯)」と「ケース厚」の根本的な刷新です。
1. 核心:機芯は9900シリーズへ完全移行、手巻きモデルも新登場
今回の最大の見どころは、ラインナップ全体が「9900シリーズ」の高機能クロノグラフムーブメントへと換装された点です。
新旧比較: 従来モデルで使用されていた9300/9304機芯は、防磁性能が一般的な4,800A/m(約60ガウス)でした。しかし、新世代の9900/9908機芯へ換装されたことで、オメガ自慢の「15,000ガウス(約1.2テスラ)の耐磁性能」を全モデルが標準装備。
新星誕生: これまで自動巻きのみだった「ダークサイド」に、手巻きモデル(Ref. 311.92.44.30.01.001 / 俗称:月之暗面9908)」が新たに加わりました。
この手巻きモデルは、自動巻き機構(自動巻きローター)を省いた分、ケースの厚みを従来の約16mmから13mm台へと大幅にスリム化することに成功。装着時のフィット感が格段に向上しています。
2. 視認性と装飾性:全陶を極めた「黒」の美学
オメガの「ダークサイド」が他ブランドと一線を画すのは、その「セラミック含有率」です。
他のブランドがケースやベゼルにセラミックを使うのに対し、オメガはケース、ベゼル、リュウズ、プッシャー、文字盤、裏蓋に至るまで、すべてをセラミック(ジルコニア)で構成しています。
文字盤の秘密: 今回の新モデルでは、文字盤にも大きな変化がありました。従来はサファイアクリスタルにブラックコーティングを施すことが多かったですが、新モデルは「ZrO2(二酸化ジルコニウム)」の刻印があるように、文字盤そのものがセラミック製。
カラーリング: オメガの象徴である「赤針」が、黒一色の文字盤に鮮やかに映えます。特に手巻きモデルは、9時位置のスモールセコンドと3時位置の30分計/12時間計の「2眼式」構成で、視認性が非常に高く、かつ無駄のない美しさです。
3. 裏の顔:ムーブメント9908の実力
新登場の手巻きモデルに搭載された「Cal. 9908」は、9900機芯の手巻きバージョン。
構造: 自動巻き機構がなくなったことで、ムーブメントの遮蔽が少なくなり、裏蓋越しに見える「アラビア風グネーブストライプ」が美しい装飾性を誇ります。これは時計ファンの間で「オメガ版四分之三夾板」とも呼ばれるほど。
技術: 柱状輪(カラムホイール)と垂直離合(バーティカルクラッチ)を採用し、秒針のピッタリとしたスタートと、高い耐久性を両立。シリコン製遊丝を採用しているため、磁気や温度変化に極めて強い構造です。
スペック: 振動数28,800振動(4Hz)、パワーリザーブ60時間。
4. 総評:なぜ「月の裏側」は特別なのか?
今回フルモデルチェンジを果たした「ムーンウォッチ・ダークサイド・オブ・ザ・ムーン」は、単なる「黒いスピードマスター」ではありません。
表格
比較項目 従来モデル (9300機芯) 新モデル (9900/9908機芯)
防磁性能 60 ガウス程度 15,000 ガウ”ス (至臻天文台認定)
ケース厚 約 16.14 mm (やや分厚い) 約 13.03 mm (大幅スリム化)
精度 COSC基準 ( -4〜+6秒) 0〜+5秒/日 (磁気無視精度)
結論:
約11万5,500円という価格は、他のスピードマスターモデルと比べると高価です。しかし、「フルセラミック」という素材感と、「15,000ガウス耐磁」という実用性能、そして手巻きモデルでの「13mm台の薄さ」を考えると、その価値は十分に正当化されます。
「派手なフルゴールドは苦手だけど、物凄く高級感があって、性能も最強の時計が欲しい」という方。まさに、そのニーズに応えるのが、この「月の裏側」の最新作です。