ブライトリングとベッカムのファッションブランドによるパートナーシップは、

ヴィクトリア・ベッカム(Victoria Beckham)のファッション業界への“参入”は、2000年代初頭のVB Rocksという名前のデニムラインから始まったと考えるとおもしろい。同ブランドは、ジーンズの価格を1本300ドル(当時の相場で約3万2000円)に設定して不評を買った。1980年代初頭、ディーゼルやトゥルーレリジョンなどのデザイナーズデニムブランドは、すでにジーンズに5桁の値段をつけていた。しかし、ベッカムの価格はほかよりも飛び抜けて高く、顧客は値段の高さに驚き戸惑ったが、同時に業界の利益を積極的に押し上げる道も開いた。現在のデザイナーズデニムの普及と、率直に言って法外な価格を考えると、今にして思えば笑ってしまう。バレンシアガやグッチ、ボッテガ・ヴェネタがデニムの全ラインを整えてコレクションに取り入れる前のことである。ベッカムは実に予言的だったのだ。

VBは常に少し先を行っている。90年代以降の文化的語彙の主要な定番であるベッカムのキャリアの軌跡は、これまで存在したなかで最も有名なガールズバンドの5人のうちのひとりとして始まり(この件に関しては私に挑戦して欲しい)、のちに世界的なベッカム家の後継者となった。今日、ベッカムは彼女の名を冠したファッションブランドの創設者兼クリエイティブ・ディレクターとして、ファッション業界で正当な力としても知られる。ヴィクトリア・ベッカムは、パリで毎シーズンプレタポルテコレクションを発表し、それらは世界50カ国、230店舗で販売されている。

ベッカムは先日、ブライトリングとコラボレーションしたウォッチコレクションを発表すると同時に、彼女が手がけた最新デザインも披露した。‌クロノマット オートマチック36 ヴィクトリア・ベッカムコレクションは6型のバリエーションがあり、すべて合わせて1500本の限定となっている。典型的なクロノマットであり、脊椎骨に似たルーローブレスレットは、触れるたびにポリッシュ仕上げの溝に指をかけたくなる(私だけ?)。また15分置きに伝統的なライダータブもある。今回の限定コレクションは、ステンレススティールとイエローゴールドのふたつの素材で展開。YGはこのラインのために、ブライトリングが特別に復活させた素材である。スイス時計ブランドの皆さん、注目あれ!

新しい文字盤のカラーリングは、ペパーミント、ミッドナイトブルー、ダブグレー、サンドなど、ベッカム自身の2024年春/夏カラーからインスパイア。文字盤にはブライトリングのロゴ、秒針にはヴィクトリア・ベッカムのイニシャルをあしらっている。内部には、6時位置に日付窓を備えた自動巻きブライトリングCal.10を搭載。ムーブメントのパワーリザーブは約42時間で、COSC認定を取得している。

36mmという非常に控えめなサイズにもかかわらず、きちんと重量感がある。90年代のブライトリングらしく、がっしりとしたデザインであり、ベッカムが時計を身につける際、このスタイルが似合っていることは誰もが知っている。「一般的に、私はもっと男性的な時計が好きです。ただ女性らしさやエレガンスも感じられる時計が好きなんです」。と彼女は言う。彼女の意見には共感できる。私もより重量感のある時計が好みだ。しかし、完璧な中間的プロポーションでなければならず、重厚感と視認性、そして曲線美と着用感のバランスが取れていなければとは思う。大きめで“マスキュリン”な時計を、少しゆったりと手首につけるというコントラストが、かえって女性らしさを引き立ててくれるかもしれない。オーバーサイズの服を着ると体が小さく感じるかのような、ボーイフレンドジーンズ効果と同じようなものだ。

この時計は決してデザインを一新したわけではなく、古典的なモデルを刷新したものだ。それはそれでいいのだが、ブライトリングはブランドを改革しようとしているのではなく、既存の製品に手を加えることで新しい層にアピールしようとしているのだ。ベッカムは「ブライトリングが得意とすることを取り入れ、そこに私のちょっとした工夫を加えただけです」と説明し、「最終的には、女性である私が身につけたいと望む時計をつくることです」と述べた。

このパートナーシップは見た目ほどあり得ないものではない。VBは、ポップスターになりたての頃から誇らしげに時計をしている。最初はSSのカルティエ タンク フランセーズを、当時のボーイフレンドだったデビッド・ベッカム(David Beckham)と揃いのフランセーズで組み合わせていたのが始まりで、そこからYG製ヨットマスター(これもデビッドとのペアモデル)へと発展した。その後、無数のダイヤモンドがセットされたジェイコブのファイブタイムゾーンも登場し、やがて雪だるま式に増え、かなり本格的な時計コレクションになっていった。

VBは常にポップカルチャーと時計のベン図の一部であった。Z世代がInstagramで、90年代のヴィジュアルカルチャーの儚さを蒸し返すことに夢中になっていると考えると、彼女の数十年前の時計の選択は、オンライン上で不滅のものとなっている。1997年、ヴィクトリアとデビッド・ベッカムが同じカルティエウォッチをした、今ではとても有名な1枚となった空港でのパパラッチ写真は、グッチのクリエイティブ・ディレクター、サバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)氏が昨年末行ったデビューキャンペーンのインスピレーションにもなった。これがベッカム夫妻のパワーなのだ。

近年、ベッカムは正真正銘の時計コレクターとして知られるようになった。ノーチラスのRef.7118/1300 R-00やRef.116505のエバーローズデイトナなどを愛用している。そして今、ベッカムは自身のウォッチラインを立ち上げるに至った。身につけるだけではなく、つくることこそが2024年に真の影響力を発揮する方法だからだろうか?

興味深いことに新しい時計コレクションは、ブライトリングと彼女のプレタポルテブランドとのパートナーシップであり、VBという女性とのパートナーシップではない。これは完全に理にかなっている。ベッカムとブライトリングは、セレブリティだけでなくデザインにも力を入れることで、時計とより広い世界を掛け合わせることができる。ヴィクトリア・ベッカムは当然の選択のように見えるが、彼女のブランドをプラットフォームとして使用し、焦点としての彼女自身を排除することで(注意:彼女はキャンペーンには登場しない)、女性消費者に対して少し真面目かつ立派な語りかけになっている。アンバサダーを兼ねたコラボレートではなく、伝統あるスイスウォッチブランドとの本格的なファッションブランドのコラボレーションなのだ。

個人的に、2024年にブライトリングの時計を購入する女性を知らないため、ブランドはこのような演出をする必要があるだろう。これはブランドCEOであるジョージ・カーン(Georges Kern)氏にとって非常に透明性の高いトピックである。「私たちは主にメンズブランドですが、なぜ市場の50%に向けて、自分たちを閉ざす必要があるのでしょうか? しかし私たちはこの男性(優位の)市場において、クールでリラックスした選択肢でありたいと思っていますし、レディスウォッチでも同じ位置付けになりたいのです。非常に保守的で、古典的なスイス時計製造に代わる自由な選択肢です」

ベッカムは女性に語りかける方法を理解している。今日、彼女の手がけるルックは洗練されていて清潔感がある。彼女のプレタポルテラインは、リラックスしていて、少し脱構築的であり、都会的な仕立て、完璧にカットされたウールのコート、足首をかすめる程の流動的なシルクのドレスで構成されている。いわば大人のためのものだ。そしてラグジュアリーファッションブランドには、非常に洗練されたキャンペーンイメージがつきものだ。ベッカムがこのコレクション発表のために、ブライトリングに持ち込んだ戦術は明らかである。彼女はクリエイティブディレクターとしても強力な主導権を握っていたようで、キャンペーンの撮影にはマリオ・ソレンティ(Mario Sorenti)氏を起用した。ソレンティ氏はファッションフォトグラファーとして高く評価されている人物で、過去30年間にわたり、私たちの記憶に永遠に刻み込まれるファッションキャンペーン(カルバン・クライン、シャネル、サンローランなどをクライアントに持つ)を撮影してきた。ベッカムはまた、彼女のモデル・ミューズのひとりをキャンペーンの主役に起用し、ヴィクトリア・ベッカムのルックとアクセサリーをフルに使用して撮影をスタイリングした。両ブランドに利益をもたらす、完璧で堅実なマーケティング機会をなぜ無駄にするのか? しかも消費力の高い現代女性が共感できるようなイメージを育ててみてはどうだろうか?

私は“史上最高のヴィクトリア・ベッカムの衣装75選”というタイトルのリスト記事に掲載された、無数のVBの写真をスクロールした。結果、90年代にいくつかのワイルドな選択があったにもかかわらず(彼と彼女のサロンをマッチングさせる誰かとか?)、彼女のスタイルは2000年代に入ってから一貫していることが明らかになった。例えばベッカムは、シンプルなアライアのドレスや、同じ黒縁サングラスを愛用するルーティンを常に理解している。それは彼女のユニフォームに対する見解であり、しばしばそのユニフォームには時計も含まれていることが多い。つまりファッションにおけるVBの力は全能だと言いたいのだ。今のところ、たった1500ピースの小さなパンチかもしれない。しかしこれがVBの真の実力と同じだけの影響力をもたらすかどうか、注目していきたい。

クロノマット オートマチック36 ヴィクトリア・ベッカムは、ブライトリングブティックおよびブライトリング公式ウェブサイトにて販売中。価格はSS製モデルのペパーミント、ミッドナイトブルーが72万6000円、ダブグレーが77万5500円、YG製モデルが414万1500円(どちらも税込)。

ブラウン BN0279 センターセコンドとブラウン。

ふたつの限定モデル、各100本。いずれもブラウンのアーカイブにインスパイアされたもの。

ブラウンは、「デザイナーのデザイナー」ディーター・ラムスのプレイグラウンドとして知られている。もしかしたら、あなたのバスルームの引き出しにブラウン製のシェーバーが眠っているかもしれない。あるいは、このブランドについて漠然としか知らないかもしれない。いずれにせよ、ブラウンのインダストリアルデザインのヘリテージがあなたの人生に影響を与えた事実に変わりはない。洗練されたライン、ミニマルな工業的カラーパレット、機能優先のモダンな要素は、私たちが日常的に接するモノのどこにでもある特徴となったが、こうした美的原則を人々の意識の最前線に押し上げ、革命的としか言いようのないムーブメントを起こしたのは、ブラウンの全体的なビジョンだった。

ブラウン BN0279 センターセコンドとブラウン  BN0279 サブセコンド リミテッドエディション for Hodinkee。

ブラウンは70年代からいくつかの目覚まし時計を発表していたが、腕に身につけられるサイズの時計、特にアナログ腕時計のデビューはずっと後になってからのことだった。80年代にブラウンが発表した丸型と角型のデジタルウォッチデザインのデュオののち、ディーター・ラムスの弟子のひとりである工業デザイナーのデートリッヒ・ルブスが、真に「ブラウンにふさわしい」アナログ腕時計の美学を定義することになる。若き日のルブスは、リピーター顧客に感謝の印として配られる日本製の安価な腕時計に愕然としたという。こうしたプロダクトへの怒りを師匠であるラムスにぶつけたルブスは、ブラウンの名を冠するにふさわしい腕時計を作ることにしたのである。

ルブスは、最も本質的な要素に絞り込んで腕時計を作ることを決意し、1989年にブラウン初の腕時計、AW10を完成させた。可能な限り機能的にデザインされたAW10は、シンプルで合理的な時刻表示のみのデザインで、ブラウンの特徴である鮮やかな黄色の秒針と書体を備えていた。1991年には数字のないAW50が登場し、日付窓の両脇にシェブロンと呼ばれる赤い矢印のディテールを配し、視認性と機能性を高めた。

詳細はこちら

ブラウン・アーカイブの目覚まし時計コレクション。

オリジナルのブラウンAW10 & AW50 ウォッチ。

ブラウンのヘリテージ保管庫にあるこれらのオリジナル腕時計デザインからインスピレーションを得た、ブラウンとの初のコラボレーションモデル、BN0279センターセコンドとBN0279サブセコンドをHodinkee Shopで限定販売する。ブラウンの真髄であるミッドセンチュリーモダンを現代的なタッチで表現したこのタイム&デイトモデルは、それぞれ100本のみの限定生産で、40mmケースとブラウン初のスイス製機械式ムーブメントを採用。

40mmサイズのビーズブラスト仕上げのステンレススティール製ケースは、特にモダンな印象を与えるが、AW10とAW50の関連性は一目瞭然。それは、3時位置の日付窓の脇に配された赤いシェブロンと、1975年の目覚まし時計時代からのブラウンの特徴であるイエローの秒針に顕著に表れている。必要なものだけを削ぎ落とし、文字盤の視覚的な調和を乱すような数字は一切見当たらない。時刻を示すのは、夜光塗料を塗布したスリムな針と、文字盤の外周を一周する白いミニッツトラックだけ。さらに、ブラウンの協力を得て、ビーズブラスト仕上げを施したユニークなケースを採用した。

12時位置には、ブラウンのアイコニックなロゴがブラックでプリントされ、その特徴的な特大の「A」の文字が全面にあしらわれている。このふたつのモデルを際立たせるために、一方のモデルにはブラックのセンターセコンド針とイエローの先端を、もう一方のモデルには6時位置にイエローのサブセコンド針を配した。

ブラウン BN0279 センターセコンドとブラウン  BN0279 サブセコンド リミテッドエディション for Hodinkee。

1921年、ドイツのメカニック兼エンジニア、マックス・ブラウンによってフランクフルトに設立されたブラウン社のヘリテージの礎は、革新的なソリューション、非の打ちどころのない品質、常識を覆すアイデアへの揺るぎないコミットメントである。初期の成功ののち、ブラウンは1932年に、ラジオとレコードプレーヤーを一体化させた機器を初めて製造したメーカーのひとつとして脚光を浴びた。1951年にマックス・ブラウンが不慮の死を遂げた後、彼のふたりの息子、アルトゥールとエルヴィンが会社とその遺産の経営を引き継ぎ、ブラウンブランドを新たな高みへと押し上げた。

時代の嗜好や理想の変化を敏感に察知したブラウン兄弟は、モダンデザインとバウハウス運動の美学を消費者向け製品のレパートリーに取り入れるようになった。機能優先のデザインに基づく、型にはまらない伝統にとらわれないアプローチは、後にブラウンブランドのアイデンティティを示す名刺代わりとなった。1955年、この革新的なデザイン・ファーストのプロセスが、ついに世に登場する。ブラウンは、1955年に開催されたラジオ・エキシビションで、新しいラジオ・プレーヤーのラインナップを展示し、モダン建築の新しい美学を、製品そのものと同じように厳格でミニマルな展示ブースで披露したのだ。

インダストリアル・デザイナーがまだ正式な職種でなかった時代、部門間のコラボレーションを画期的に重視したブラウンは、学際的な思想家、クリエイター、メーカーが一堂に会して、美的体験をデザインプロセスの最前線に据えた消費者向け製品を創造するためのユニークな環境を培い、日常を非日常へと変貌させた。今日、工業デザインの世界におけるブラウンのスタイリスティックな影響力は、かつてと同様に強く、Appleをはじめとする現代の世界的企業の美的アプローチに直接影響を与えて続けている。

 ブラウン BN0279センターセコンドとブラウン BN0279サブセコンドは、Hodinkee Shopにて、在庫がある限り950ドル(約14万3000円)で販売中です。各時計にはアメリカ国内送料無料、世界送料割引が適用されます。スイス製機械式ムーブメントと特徴的なビーズブラスト仕上げのケースに、クラシックなブラウンの腕時計の要素を組み合わせ、デザイン界で最も尊敬されるブランドのひとつに敬意を表し、Hodinkeeが華やかさを添えてました。

テニススター、そしてスイス時計業界の巨匠らが集結。

米国を拠点に、スイスで製造されるフレミングは、創業者の長年の情熱による集大成であり、長期的な視野でこの業界に参入することを計画している。

時計の世界はとても狭く、“秘密”という概念は曖昧に守られているだけであり、もしかしたらこの話の一部をご存じかもしれない。しかし本日(3月11日)、米国に拠点を置く新しい独立ブランド、フレミング(Fleming)の最初の時計、“シリーズ1 ローンチエディション”がついに登場した。スイスのパートナーと協力して製作された時刻表示のみのドレスウォッチは、すでにさまざまな計画段階に入っている3つの時計コレクションのファーストシリーズだ。“フレミング”という名前は知らなくとも、この新しいブランドの背後にいる人物の何人かは知っているかもしれない。

フレミングのシリーズ1は、パンデミックの最中に自身のブランドを立ち上げることを夢見たコレクターである、アメリカの若き創業者トーマス・フレミング(Thomas Fleming)氏の脳内から生まれた。その夢を実現するために、彼はスイス時計業界にいる巨匠たちに協力を仰いだ。

「情熱があってこそのプロジェクトです」とフレミング氏は言う。「過去50年間のうち、本格的な大規模事業を開始してから、数年以上存続しているブランドはほとんどありません。このような事業に取り組むには、情熱が必要なのです。そして私は時計への大きな情熱があったので、自分の時計をつくるのは楽しいだろうと思いました。しかし時計に対する独自のコンセプトや時計製造のアプローチなど、ほかのブランドとは異なるものを作りたいという思いもあったのです」

実はコン氏はフリーランスのフォトグラファーとしてHODINKEEで働いていたことがあり、私がHODINKEEに入社するずっと前から、ニューヨークの時計イベントで何度か会っていた友人である。フレミング氏とはInstagramで同じようにつながり、数年前にやり取りを始めている。しかし友人になった当初から両者には、今回の発売に関するいかなる報道についても、話題にする価値のある製品であることが前提だと伝えていた。そして彼らは結果を残したと思う。

フレミング シリーズ1 ローンチエディションは、現代的なドレスウォッチとして最適なサイズである。直径38.5mm、厚さ9mm(うち1mmはドーム型風防)、ラグからラグまでは46.5mmで、ケースは3種類の素材で展開している。トーマス・フレミング氏は、“何百ものケース”を3Dプリントして縦横比を計算し、実際に装着してサイズ感を調整した。ミドルケースはサテン仕上げの上下面、ポリッシュ仕上げのケース側面、開口部が設けられたホーン型ラグの3つのパーツから成る。素材はタンタル(25本)、ローズゴールド(7本)、プラチナ(9本)が用意され、価格は4万5500スイスフランから5万1500スイスフラン(日本円で約765万~865万円)となっている。

ケース内部には、有名な独立時計師ジャン-フランソワ・モジョン氏とクロノードのチームが開発したCal.FM-01を搭載する。ムーブメントは伝統的な手作業によって仕上げられた、セミスケルトンのブリッジと香箱が特徴だ。これにより約7日間のパワーリザーブを実現するツインバレルに供給された巻き上げ量を確認することができる(なおムーブメントの裏側にもパワーリザーブ表示がある)。

モジョン氏が加わったことは、プロジェクトにとって大きな恩恵をもたらした。彼の仕事は、彼自身の影響力と比べるとやや控えめだが、伝説的だ。カリ・ヴティライネン(Kari Voutilainen)氏と組んだMB&FのLM01とMB&F LM02のムーブメントから、ハリー・ウィンストンのオーパスX、エルメスのアルソー ルゥール ドゥ ラ リュンヌ、チャペックのケ・デ・ベルクまで、数え始めるときりがない。

同プロジェクトと同様に恩恵を受けているのが、名匠カリ・ヴティライネン氏が所有するコンブレマインで作られる、手作業で装飾された文字盤だ。同チームの技術は一目瞭然である。RGのモデル(シリアルナンバー入り7本)は、インナーダイヤルとランニングセコンドのインダイヤルに手打ちで模様を入れ、アウターリングには手作業によるギヨシェ彫りが施されている。プラチナモデルの文字盤は手作業によるギヨシェのみで仕上げている。最後に、タンタルモデルの文字盤には、フロストプラチナとダークブルーのアベンチュリンをミックスしている。

これらのサプライヤーに加えて、ブランドはラ・ショー・ド・フォンのTMH(Traditional Mechanical Horological)社から追加部品を調達し、さらにル・ロックルのデザインスタジオ、ネオデシスと共同でデザイン設計している。またスイス・バスクールにあるエフェトールは、タンタルを含むこれらのケースに取り組んだ。ラグがスケルトンになっているため、ほかのケースメーカーはタンタルでそれを実現するのは不可能だと考えていたと、フレミング氏は教えてくれた。

最後に、新進ブランドを手に入れる際に安心できる付加価値として、フレミング氏は保険会社と提携し、購入者が加入や承認をせずとも、販売時に1年間の無料補償をつけることを実現した。

昨年、3度のグランドスラムのファイナリストに残った、熱心な時計愛好家であるキャスパー・ルード(Casper Ruud)選手が、2023年6月の全仏オープンでブランドを“本格的に立ち上げ”たとき、どこからともなく現れたのだ。フレミングにとってもルード氏にとっても、それは大胆な行動であった。

アクアスターは非常にクールなベントス500を機械的に、忠実に再現したモデルを発表した。

センターミニッツ式のモノプッシャークロノグラフを搭載しつつ、ブランド史に残るクラシックな要素をシャープかつ機能的に再現。

300本限定として発表された2024年モデルには、ラ・ジュー・ペレ製の新しいセンターミニッツ式モノプッシャークロノグラフムーブメントが搭載され、ヴィンテージベントス500の独創的かつツール的な魅力を効果的に再現している。プロポーションを整えたケースと、人間工学に基づいて改良された新作ベントス500は、アクアスターの中核的な技術や能力を示す重要な要素であり、ブランドの最も象徴的なレガシーウォッチのひとつを真に考え抜いたものである。

2024年のベントス500 “ファウンダーズエディション” クロノグラフのサイズは、直径42mm、厚さ15.8mm、ラグからラグまで47mm。ラグ幅は22mm、200mの防水性、ARコーティングを施したフラットサファイア風防、夜光セラミックベゼルを備えたこの300本限定のシリアルナンバー入りモデルは、ソリッドスティールの裏蓋でまとめている。

奇妙なことにベントス500は、ダイバーズウォッチとしてはムーブメントが重要な部分を占めている。2020年にリック・マレイ(Rick Marei)氏によって再始動されたアクアスターは、これまで機能に適したムーブメントに制限があったためにベントス500を再現することができなかった。この限定モデルのために、マレイ氏はスイスのムーブメントメーカーであるラ・ジュー・ペレというパートナーを見つけた。ラ・ジュー・ペレはスイスのムーブメント製造会社で、ETAやミヨタがいわゆる“エボーシュ”オプションとして提供する以上のものを必要とするブランドに向けた、特別なムーブメントを製造することで知られている。

その結果生まれたのがCal.1MPSだ。これは2万8800振動/時で時を刻む自動巻きムーブメントであり、中央に60分積算計、モノプッシャーコントロール(ここではケースの2時位置に配置)を備えている。オリジナルを好む人にとっては、リューズがふたつ、クロノグラフプッシャーを4時位置に配したほうがいいのだろうが、より自然な姿勢でクロノグラフを操作できるよう、コントロールを入れ替えた(左利きの場合、4時位置よりも2時位置で操作するほうが自然な感じがする)。なおアクアスターは、水中でもクロノグラフを操作できると保証している。

そのほか、注目すべきオリジナルからの変更点は、セミグロスのブラックダイヤルの採用と(最近発表されたベントスH1はフルマットだった)、300mから200mへの防水性の変更である。これはどのダイバーにとっても問題ではないだろうが、一部の純粋主義者の感情を逆なでするかもしれない。ただパッケージングのほかの部分と適切なムーブメントを考えると、水中で使用できない100mの防水性であったとしても許せたと思う。

アクアスターではいつものことだが、ベントス500 クロノグラフはブランドのウェブサイトを通じて直接販売され、最も安い価格で入手できるのは予約注文の期間のみだ。ベントス500 クロノグラフの価格は、予約注文で2790ドル(日本円で約42万2000円)、予約注文以降は3790ドル(日本円で約57万3000円)となる。予約受付期間は4月5日までで、配送は今年5月を予定している。

ある程度の背景を知らなければ、このモデルはここ数年で広く浸透してきたブランドの復刻戦略のひとつにすぎないと思うだろう。そして確かに2024年のベントス500はそうなのだが、それ以上のものでもある。ありがたいことに、僕はアクアスターとベントス500の両方をかなり真剣に取り組んでいるふたり組を知っている。リック・マレイ氏(彼はアクアスターの仕掛人だが、ドクサをオンライン時代に引き込み、2017年の50周年記念サブ300シリーズなどのヒット作を手がけた人物としても覚えているかもしれない)と、僕の親友でHODINKEE出身であもるジェイソン・ヒートンだ。

リック氏に話を聞くと、おそらくベントス500ほど彼の心に近いアクアスターモデルはないとわかる。この時計を発表するまでに、彼と僕のあいだでやり取りした数通のメールのなかで、彼はこう語っている。「アクアスターにとって、これはファミリーの聖杯です。個人的にも、これが時計業界における私の仕事のハイライトです。思い返せば、この日を25年間待ち望んでいたような気がします」

ジェイソンは「歴史的な観点から言えば、発表された当時のベントス500は最も高性能なダイバーズウォッチのひとつであり、当時としては非常に優れた防水性と、ダイバーが完全なダイブ(クロノグラフで最大1時間)と減圧停止(ベゼルで)などの中間機能を追跡できる手段を備えていた。現代の復刻版においても、独自に開発した新しいクロノグラフムーブメントを搭載して同じ機能を提供し、同階級の先頭を走っている」

ヒートンにはさらに個人的なつながりがある。彼は自身の書籍シリーズの主人公であるジュリアン・“タスカー”・タスク(Julian “Tusker” Tusk)が着用した時計にベントスを選んでいるのだ。ジェイソンはこの選択について次のように説明している。「私の著書『Depth Charge』では、主人公のタスカーに、彼自身の性格を反映させるために、より目的にかなった高価なものではない時計を身につけて欲しかった。彼が身につけているベントスは、元米海軍の潜水士だった亡き父から受け継いだもので、彼が初めてダイビングを学んだ際、タスカーに受け継がれた。それは家宝であり、大切にしまわれるものではなく使われるべきものだが、古いツールウォッチであるベントスのような時計は、そうあるべきだと思っている」。このベントスの選択に敬意を表して、新しいベントス500の各予約注文には、現在進行中の彼のタスカー小説シリーズ2作目、『Sweetwater』が1冊付属する。

僕の手首にアクアスター ベントス500のプロトタイプを着用した。

その時代のダイバーズウォッチとしても、アクアスター全体としても、長い歴史を持つ時計である。ここで強調しておかなければならないもうひとつの注意点は、今僕たちが話題にしているのが、4000ドル以下(日本円で約60万5000円、予約注文だともっと安い)でセンターミニッツを備えたスイス製モノプッシャークロノグラフだということだ。そもそもセンターミニッツクロノグラフ自体、モノプッシャークロノグラフ同様に珍しい。それらを1本の時計にまとめたとなると、ダイバーズウォッチとして、特にこの価格帯ではかなり珍しいと感じる。

この1週間、ベントス500のプロトタイプを使ってみたが、着用感はまさに予想どおりであった。ずっしりとした厚みがあり、さすがそこからインスピレーションを得ただけはある。とはいえ大きすぎず、クロノグラフ機能は非常に便利だ。もちろん60分しか計測できないが、小さなインダイヤルの目盛りのために目を細めて計測する必要はない。ダイブコンピューターの時代よりも前に考案されたダイバーズウォッチとしては、その理由は理解できるし、着用すると本当に楽しいのだ。その大きな理由は、アクアスターがセンターミニッツ式のクロノグラフムーブメントを搭載しているからである。僕はH1の外観が好きだが、ベントス500はさらにいくつかの、そして非常に魅力的な条件を満たしている。

僕は普段、クロノグラフ、特にダイビング用に設計されたものにそれほど熱心ではないが、機能的な観点から見ると、この新しいベントス500はダイバーズウォッチの黄金時代に発売されたオリジナルの特別な魅力を見事に再現した素晴らしい仕事をしており、これはアクアスターとそのファンの両方にとってワクワクするような展開だと思っている。

基本情報
ブランド: アクアスター(Aquastar)
モデル名: ベントス500(Benthos 500)

直径: 42mm
厚さ: 15.8mm
ラグからラグまで: 47mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: ブラック
インデックス: 高密度のスーパールミノバを充填したスクエアインデックス
防水性能: 200m
ストラップ/ブレスレット: イソフレーン(Isofrane)社ラバーストラップ

ムーブメント情報
キャリバー: 1MPSモノプッシャー・クロノグラフ(ラ・ジュー・ペレ社製、アクアスター専用)
機能: 時・分・センターセコンド、センターミニッツクロノグラフ(60分積算計)
直径: 30mm
厚さ: 7.9mm
パワーリザーブ: 約60時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時

価格 & 発売時期
価格: 予約注文で2790ドル(日本円で約42万2000円)、予約注文以降は3790ドル(日本円で約57万3000円)

タグ・ホイヤー カレラ スキッパーにゴールド仕様モデルが登場。

タグ・ホイヤー カレラ “グラスボックス”は、この1年で着実にラインナップを拡大した。しかしその一方で、最近復活を遂げたスキッパーも、ローズゴールド(RG)のケースとマッチしたダイヤルのアクセントを備えた2代目モデルを発表した。

スティール製スキッパーの発表から1年も経たないうちに、RG製の同モデルが登場したことになる。ケース素材の変更は別として、このRGモデルはブルーダイヤルと航海をテーマにしたカラーリング(クロノグラフ秒針のレッドに至るまで)を維持することで、グラスボックスに由来した黄金律を破綻させていない。サイズも変わらず、ゴールドのスキッパーは幅39mm、厚さ13.9m(サファイアクリスタル風防を含む)、ラグからラグまでの全長は46mmである。

ムーブメントもスティール製と変わらず、ホイヤー02の特別バージョンであるTH-20-06を搭載する。これが12時間積算計を持つコラムホイール式クロノグラフに加え、6時位置にデイト表示、中央にクロノグラフ秒針を備えた仕様となっている。ムーブメントの振動数は2万8800振動/時(4Hz)で、パワーリザーブは80時間である。

無垢のRGであるため、価格はスティール製(税込90万7500円)よりもやや高価に設定されている。ゴールド製スキッパーの価格は269万5000円(税込)で、限定モデルではない。

我々の考え
ライアン・ゴズリング(Ryan Gosling)が着用したRef.1158CHにインスパイアされたYG製のカレラ グラスボックスのようなモデルがRG仕様よりも理想的であったが、私はスキッパー(そしてグラスボックス)が本当に好きで、このモデルも例外ではない。私は過去にタグ・ホイヤーに辛辣な態度をとったことがあるが、クロノグラフの愛好家ではないにもかかわらず、この時計のつけ心地と見た目が大好きだ。RG仕様でもその魅力が損なわれることはない。もしあなたがスキッパーやより幅広のカレラの魅力が理解できないのであれば、ホイヤー カレラに関するベンのReference Pointsの記事をチェックすることを強くおすすめしておく。さらに、ジェフ・スタイン執筆による“スキッパレラ”の根強い人気に関する素晴らしい記事もご覧いただきたい。

とはいえ、スティールモデルが100万円未満であるのに対し、このRG仕様モデルがかなり高価であるのも事実だ。それにこの価格帯であれば、カレラのカタログのなかでも特別ながらニッチな製品として残り続けると思う。通常モデルとしてスティール仕様があってのゴールド仕様ということであれば、私は(たとえ買えないとしても)この現実を受け入れることができる。

読者諸兄はどちらがお好みだろう……、スティールか、ゴールドか? 私はタグ・ホイヤーがカレラ グラスボックスのデザインで絶対的な成功を収めていると思うし、このブランドが愛好家を興奮させるような時計をさらに生み出すのが楽しみだ。

基本情報
ブランド: タグ・ホイヤー(Tag Heuer)
モデル名: カレラ クロノグラフ スキッパー
型番: CBS2241.FN8023

直径: 39mm
厚さ: 13.9mm
全長: 46mm
ケース素材: 18K(5N)ローズゴールド
文字盤色: ブルー
インデックス: アプライド
夜光: あり
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: RG製尾錠付きのブルーファブリックストラップ

ムーブメント情報
キャリバー: ホイヤー 02
機能: 時・分・秒表示、デイト表示、12時間積算計
直径: 32mm
パワーリザーブ: 80時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時(4Hz)
石数: 33
追加情報: コラムホイール式クロノグラフ

価格 & 発売時期
価格: 269万5000円(税込)