オメガからリリースされた、「シーマスター アクアテラ」のターコイズカラー文字盤。

オメガの最新「シーマスター アクアテラ」はターコイズカラーを使った文字盤
2025年1月、オメガの「シーマスター アクアテラ」に、新しいモデルが加わった。文字盤が、ターコイズカラーからブラックへとグラデーションする、独創的な新作である。

直径41mmケースと直径38mmケースの2種類が展開されており、今回後者の、38mm径のモデルを着用することができたので、本記事でレビューしていく。

オメガ シーマスター アクアテラ
オメガ「シーマスター アクアテラ 150m シェード」Ref.220.10.38.20.03.005
自動巻き(Cal.8800)。2万5200振動/時。パワーリザーブ約55時間。SSケース(直径38mm、厚さ12.3mm)。150m防水。102万3000円(税込み)。

“サマーブルー”に続くグラデーション文字盤の快作!
近年の時計業界では、外装技術の進化が著しい。特に分かりやすいのが、オメガスーパーコピー代引き文字盤の“色”だ。ブラックやホワイト、ブルーといった単色のみならず、中間色やグラデーションカラーを採用したり、繊細な装飾にこういったさまざまなカラーを与えたりと、色を使った表現によって、各社は文字通り「多彩」な文字盤を打ち出している。

同一コレクションの中で多数のバリエーションを展開することで、幅広いユーザーにリーチしてきたオメガであればこそ、この昨今の「文字盤競争」においても、他社から頭ひとつ抜きんでているのはうなずける。先日、オメガのレディースウォッチについての記事を公開しており(オメガの人気レディースモデルから、広報担当者がおすすめを厳選。時計女子に買ってほしい1本はこれだ!)、この記事の中でも言及しているが、広報担当者から「オメガは、例えば同じ青であっても、トーンが同じではないから文字盤色の呼び名を変える」と聞いたことが、とても強く印象に残った。

そんなオメガが打ち出したターコイズカラー文字盤が、悪かろうはずもない。実際プレスリリースを見た時は心が躍ったし、実機を見て、いっそうそのデザインの虜になった(オメガの広報画像は実機とそこまで変わらないように思うものの、やはり腕時計全体として実機を見ると、良さが直に伝わる)。

中央の明るいターコイズカラーから、徐々に暗くなり、外周はブラックに染められたグラデーション文字盤。グレーPVD加工によるインデックスやブラックのカレンダーディスク、ミニッツトラックの淡いターコイズカラーが調和して、他社のグラデーションカラー文字盤とは異なるキャラクターを確立している。ホワイトは蓄光塗料であるスーパールミノヴァのため、暗所での視認性も確保されている。ちなみにレビュー期間中にwebChronosのSNSにこのモデルをアップしたところ、読者から「ターコイズ1色にしなかったので、ビジネスシーンでも使えそう」というコメントをもらった。確かにブラックやグレーが使われることで、ターコイズというともすれば奇抜なカラーリングであるにもかかわらず、やわらかな印象となっている。
この文字盤が特別なのは、ただターコイズカラーが使われているというのではなく、徐々にブラックへとグラデーションさせられている点だ。ラッカーで表現されたこのグラデーションに不自然さはなく、かつ表面は歪みがまったくなくフラットで、オメガの文字盤製造の腕前が感じられる要素となっている。

オメガのグラデーションの妙は、2023年、「シーマスター」誕生75周年を記念して打ち出された“サマーブルー”エディションで、すでにご存じの読者もいるだろう。このサマーブルーエディションの出来栄えも見事なものであり、本作はこのエディションに続く快作と言える。ちなみにサマーブルーエディションでは防水性に由来した海の深度が文字盤で表現された。このターコイズカラーも、海からインスピレーションを得ているのだという。

文字盤を斜め下から見ると、インデックスの立体感がよく分かる。オメガのロゴも立体的。こういったパーツの立体感は、丁寧に面取りされていることと相まって、腕時計に高級感を出してくれる。
本作の文字盤はポリッシュされており、しかしツヤが強くなく、またシーマスター アクアテラによく見られるサンレイ仕上げが施されていないため、落ち着いた印象を与える。この印象には、グレーPVDによるインデックスや針、ブラックのカレンダーディスクも一役買っている。ちなみにこのグレーはかなり濃く、画像や実機を見た時はブラックかと思った。

立体的で十分な大きさの針・インデックスは判読性にも優れており、強い光源下でも見にくいと感じることはなかった。

腕時計のジェンダーレス化の最先端
以前、「シーマスター アクアテラ シェード」を着用レビューした(“良い腕時計”を所有する愉しみ。オメガ「シーマスター アクアテラ シェード 38mm」を着用レビュー)。この“シェード”は今回のレビューモデルと外装が共通している部分が多く、ケース径は同じ38mm。ブレスレットも、これまでシーマスター アクアテラではおなじみであった幅広のものより細かく、丸形のコマが連なったタイプとなっている。

コマが小さいとドレッシーに見せてくれる効果がある。ポリッシュ仕上げの面積が大きいので手元でキラキラと輝き、文字盤とともに、仕事中などでもついつい目を奪われてしまうディテールのひとつとなっている。
そのため本作のケース径は、女性で、かつ手首回り14.7cmの自分にとってはやや大きく、厚みも重量もそれなりにあるにもかかわらず、すこぶる装着感が良いということは予想できていた。そして今回も着用中、ほとんどストレスを感じなかった。

8コマ抜いた状態でも重量は120gであったため、最初のうちは重いと感じたものの、すぐに慣れた。一般的に自分自身の手首幅よりも大きく、厚みを持ったケースは、小径薄型ウォッチと比較して着用感は悪くなる。しかし本作、というかオメガの腕時計の多くは全長が短く(本作は44.9mm)、またヘッドが重くともブレスレットも重量を持たせることでバランスが取れているため、着け心地がよいのだ。こういった装着感が考えられた設計にも、「やっぱりオメガはすごいよ」と思わされる。なお、さらに以前、41mm径の「シーマスター ダイバー300M パリ2024」を着用したことがある。自分にとってはかなり大きいサイズのこのモデルも、快適に身に着けられたことを記しておく。

自動巻きムーブメントを搭載しているということもあり、ケースバックは厚みを持つ。そのため若干手首から浮いているが、手首回りのサイズにピッタリ合わせれば着用中にヘッドが振られるなどせず、ほとんど気にならなかった。
コマが小さいので、手首回りピッタリのサイズに合わせやすいことも、優れた装着感に寄与している。ちなみにブレスレットから外せるコマが結構あるのもミソ。私は着用時、8コマ外してもらったが、まだあと8コマ外せるようになっており、かなり手首の細いユーザーにも対応してくれるだろう。

このサイズに関して驚かされたのが、バックルに微調整機能が付加されていたということだ。特許を取得したコンフォートリリース調整機構だ。

バックルを開くと「L」「S」と印字されたパーツがあり、そのパーツのサイドに取り付けられたつまみを押してスライドさせる仕様。このスライド時にひっかかりはなく、さすがオメガ、パーツの加工精度が高い。
一見すると、普通のバックル。しかし実は、開いた板の部分に、スライド式に動くコンフォートリリース機構が搭載されており、工具なしで微調整を行うことが可能なのだ。微調整機構は手首がむくんでブレスレットがきつくなってきた時に少し緩める、など、便利な反面、搭載するとバックルが厚みを持ちやすくなる。しかしオメガはこの機構を、厚みや見た目を大きく変えずに備えているのだ。オメガウォッチの「装着」に関する実用性は、さらに高まったと言えるだろう。

このように、幅広い手首サイズのユーザーに寄り添った設計の本作は、“腕時計のジェンダーレス化”の最先端をいくように思う。

男性ユーザーが多い時計市場で、かつて女性向けのモデルというと小型なクォーツウォッチがシェアのほとんどを占めていた。「大きいサイズの機械式時計が好き」といった女性は、その選択肢の狭さに苦労したかもしれない。逆もまたしかりで、「小型なケースサイズの腕時計が欲しいけど、選択肢がレディースモデルになってしまう」といった経験をした男性もいるだろう。しかし近年、腕時計の世界にもジェンダーレス化の波が来ていると感じる。同じコレクションでケースサイズのバリエーションに幅を持たせたり、男女どちらも使いやすいデザインを採用したりといったブランドが出てきているのだ。

そんな中でオメガは、ただサイズを小型化したりバリエーションを増やしたりするにとどまらず、男女問わず心地よく身に着けられる設計の腕時計を製造している。オメガは特に「ユニセックス」とうたっているわけではないためこの意図のありなしは分からないものの、同ブランドの製品は間違いなく女性も男性も選択しやすい腕時計であり、ジェンダーレスの波においても、一歩先に進んでいると感じる。

搭載するムーブメントはCal.8800。パワーリザーブ約55時間と、現代においては決して長くはないものの実用的な範囲だ。精度はきちんと実測していないが、1日少し経過した時点で-1秒もズレていなかった。マスター クロノメーター認定のため、磁気帯びの心配もない。

分かっちゃいたけど、やっぱりすごい!
2025年1月にリリースされた、オメガの「シーマスター アクアテラ」ターコイズカラー文字盤を着用レビューした。

オメガのシーマスターは何度か着用させてもらっているし、これまで他の製品も多数見てきた。だから、このブランドの腕時計の完成度が高いことは理解しているつもりだ。しかし分かっちゃいても「やっぱりすごい!」と快哉を叫ばずにいられないほど、本作は独創的で、優美な文字盤を備えていた。

同時に、オメガの、多彩なバリエーションを用意することで幅広いユーザーのニーズに応える戦略も知ってはいたものの、一般的なメンズサイズのモデルであっても手首幅に大きく左右されない装着感を追求する姿勢は、近年の時計業界のジェンダーレス化の波において、最先端をいくことも本作によって気付かされた。

「男女問わずオススメです」。やや陳腐だけど実は結構難しいこの表現。シーマスター アクアテラなら、文句なしに使えるだろう。

ロンジンが2025年に発表した新作時計を、まとめて紹介する。

2025年 ロンジンの新作時計を一挙紹介!

ロンジンは自社の過去の名作に範を取った腕時計によって、スーパーコピーブランド Nランク代金引換専門店時計愛好家から高い人気を得ている時計ブランドだ。今年も、そんな名作から着想を得つつ、モダンな意匠をまとったモデルが登場するほか、スポーツウォッチコレクションの「コンクエスト」から幅広いユーザーにリーチする新たなバリエーションもラインナップされている。

1968年のダイバーズウォッチから着想を得た「ウルトラ-クロン カーボン」
2022年に発表されたロンジンの「ウルトラ-クロン」に、カーボンケースをまとった新作が加わった。ウルトラ-クロンのオリジナルは、1968年に誕生した同社初の毎秒10振動ムーブメントを搭載したダイバーズウォッチである。新作モデルでは、特徴的なクッション型のケースだけではなく、ムーブメントの振動数も忠実に再現されていることが特徴だ。

今回の新作では、ミドルケースにカーボン、ベゼルとケースバック、リュウズにはチタンを採用している。軽量かつ耐食性に優れたカーボンとチタンは、ダイバーズウォッチとの親和性も高い素材だ。

2022年のステンレススティールケースモデルとは異なり、オールブラックのカラーリングで仕上げられていることも特徴。色彩の変化が少ない分、カーボン製ミドルケースのマーブル模様やファブリックストラップの無骨な生地感など、素材ごとの違いに着目しやすい。ベゼルには目盛りの入ったアルミニウム製インサートが取り付けられているが、回転機構は備わっていない。

搭載するムーブメントは、機械式自動巻きのCal.L836.6。毎秒10振動のハイビートでありながらも約52時間のパワーリザーブを確保し、シリコン製ヒゲゼンマイによって耐磁性も高められている。

ロンジン「ウルトラ-クロン カーボン」Ref.L2.839.4.52.2
自動巻き(Cal.L836.6)。25石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約52時間。Ti×カーボンケース(直径43mm、厚さ14mm)。30気圧防水。75万6800円(税込み)。

「コンクエスト」に38mm径と41mm径モデルが登場
ロンジンのスポーツウォッチとして長年親しまれてきた「コンクエスト」が、2024年にリニューアルを遂げた。コンクエストは1954年に登場したコレクションであり、同社の自動巻きモデル黎明期を飾った実用機だ。そのデザインは、現行の「コンクエスト ヘリテージ」に受け継がれている。対して現行のコンクエストでは、初代モデルの特徴でもある上品さと実用性の両立を、現代的な解釈で体現している。

そんなコンクエストの38mmケースモデルと41mmケースモデルに今年、新たなラインナップが加わった。ダイアルカラーは、ブルー、グリーン、ブラックの3種類。ダイアルと同色のラバーストラップが装着されており、アクティブなシーンでも軽快に着用することが可能だ。

ムーブメントは、ロンジン専用に開発されたCal.L888.5を搭載。シリコン製ヒゲゼンマイを搭載し、約72時間のパワーリザーブを備えた薄型の自動巻きムーブメントだ。

ロンジン コンクエスト

ロンジン「コンクエスト」
「コンクエスト」の新作には、直径38mmまたは41mmのケースサイズが新たに用意された。いずれのサイズも、ダイアルカラーのバリエーションははブルー、グリーン、ブラックの3種類となっている。自動巻き(Cal.L888.5)。21石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径38mmまたは41mm、厚さ10.9mm)。10気圧防水。各30万4700円(税込み)。

「コンクエスト」30mm径のモデルもラインナップされる
コンクエストには、さらに直径30mmケースの新作も登場。ステンレススティール製のミドルケースとブレスレットに、18Kローズゴールドキャップのベゼルと18Kローズゴールド製のリュウズを組み合わせたバイカラー仕様の外装が、エレガントな印象を与える。

ダイアルは、シルバー、グリーン、ブルーのサンレイ仕上げの他、マザー・オブ・パール製の合計4種類のバリエーションが用意されている。マザー・オブ・パールダイアルのモデルのインデックスにはダイヤモンドがセットされ、より華やかさを感じさせる。いずれのモデルも6時位置に日付表示を配しており、デイリーユースにふさわしい実用性も確保されている。

小ぶりなケースサイズでありながら、本格的な機械式ムーブメントを採用していることも本作の魅力だ。Cal.L592.5は、シリコン製ヒゲゼンマイと約45時間のパワーリザーブを備え、実用性にも優れている。

ロンジン コンクエスト

ロンジン「コンクエスト」
自動巻き(Cal.L592.5)。22石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。SSケース(直径30mm、厚さ9.7mm)。10気圧防水。各46万8600円(税込み)。
ロンジン コンクエスト
ロンジン「コンクエスト」
自動巻き(Cal.L592.5)。22石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。SSケース(直径30mm、厚さ9.7mm)。10気圧防水。55万1100円(税込み)。

「ミニ ドルチェヴィータ」
ロンジンが1927年に製作したレクタンギュラーウォッチに着想を得て誕生した「ドルチェヴィータ」。その派生コレクションである「ミニ ドルチェヴィータ」に、新たなバリエーションが追加された。

新作は全部で4種類。ステンレススティールと18Kゴールドキャップのバイカラーのブレスレットを装着している。ゴールドキャップは、イエローゴールドとローズゴールドの2種類、さらにそれぞれケースへのダイヤモンドセッティングの有無によって、合計4種類の組み合わせとなっている。ブレスレットのゴールドキャップと色味を合わせた、18Kゴールド製のリュウズが採用されている。

ダイアルは、レイルウェイミニッツトラックやローマンインデックス、スモールセコンド、バトン型の時分針を組み合わせ、ロンジンスーパーコピー 代引きアールデコ様式にのっとったデザインにまとめられている。シルバーのダイアルの表面には繊細なギヨシェ装飾が施され、光を受けて煌めく様子を楽しむことが可能だ。また、日常使いに便利なクォーツムーブメントを搭載している。

ロンジン ミニ ドルチェヴィータ

ロンジン「ミニ ドルチェヴィータ」Ref.L5.200.5.70.7/L5.200.5.71.7
クォーツ。SSケース(縦29mm×横21.5mm、厚さ6.75mm)。3気圧防水。各78万9800円(税込み)。
ロンジン ミニ ドルチェヴィータ

ロンジン「ミニ ドルチェヴィータ」Ref.L5.200.5.78.7/L5.200.5.79.7
クォーツ。SSケース(縦29mm×横21.5mm、厚さ6.75mm)。3気圧防水。各113万5200円(税込み)。

ランゲの手札のなかで最も切望されている2枚のカードが、

今年はA.ランゲ&ゾーネにとって大きな年だ。ブランド誕生30周年であり、ダトグラフ誕生25周年でもある。今年、ランゲはさらに多くのイベントを用意していることだろうが、ランゲがコレクター向けに提供する最も“贅沢”な2つを組み合わせた時計、ハニーゴールド製の新作ダトグラフ・パーペチュアル・トゥールビヨン “ルーメン”の発表は特に見ものだ。典型的なランゲらしいスタイルであり、この時計は素晴らしいのだ。

Datograph Perpetual Tourbillon Lumen
ランゲのフラッグシップモデルであるダトグラフ。ランゲ&ゾーネコピー 代金引換優良サイトその誕生25周年を祝うだけでなく、2010年以来6作目となるルーメンモデルのリリースであり(厳密には、最初のリリースはルミナスと呼ばれているが、その意味はお分かりいただけるだろう)、そしてハニーゴールドを使用した14作目のランゲである。ハニーゴールドをご存じない方のために説明しておくと、これはブランドが特許を持つ独自の合金で、標準的な18Kよりも硬く、イエローゴールドとローズゴールドの中間に位置する独特の光沢と温かみのある色合いを備えている。ケースサイズは直径41.5mm×厚さ14.6mmで、過去に発表されたモデルと同じ。ケースバックのフランジが盛り上がっているため、ミドルケースが薄くなったように見える。

Datograph Perpetual Tourbillon Lumen
一方、ルーメンの名称は一目瞭然だが、その名に劣らず素晴らしい。スモーキーなコーティングが施されたサファイアクリスタル製の文字盤からは、ダトグラフ・パーペチュアル・トゥールビヨンを駆動する手作業で仕上げられたムーブメントCal.L952.4を、文字盤側から見ることができる。コーティングが施されたクリスタルの様々なパーツが紫外線にさらされると輝き、4時位置と8時位置のサブダイヤルは、この時計にパーペチュアルの名を冠しているパーペチュアル・カレンダーの関連部分をすべて表示する。左のサブダイヤルは、ランニングセコンド、曜日、デイ/ナイト表示。右側にはクロノグラフのミニッツカウンター、月、閏年の表示がある。そして、ダトグラフには欠かせない、12時位置のアウトサイズデイト表示も健在だ。これらのサブダイヤルはすべて暗闇で光り、さらにクロノグラフ針、プリントされたタキメーター、夜光ムーンフェイズも表示される。もちろん、サファイアの裏蓋からはトゥールビヨン・ケージを含むムーブメントの残りを見ることができる。

新しいダトグラフ・パーペチュアル・トゥールビヨン・ハニーゴールド・ルーメンは、限定50本(シリアルナンバー入り)で、価格は62万ドル(日本円で約9413万円)だ。

我々が思うこと
もし、ランゲがダトグラフ誕生25周年をどのように祝うかを予想しろと言われたら、これは特に私のリストの上位には入らなかっただろう。ダトグラフの新ムーブメントが発表されるかもしれないと思ったからだ。しかし、この新しいダトグラフ・パーペチュアル・トゥールビヨン・ハニーゴールド・ルーメンを見れば、文句はない。私は初めてダトグラフ・パーペチュアル・トゥールビヨンを見たときのことをはっきりと覚えている。それは本当に心に残る経験だった。

Cal.L952.2(そして現在のCal.L952.4)クロノグラフムーブメントは、伝統的な時計の構造と美学を最先端の機械加工技術と融合させ、市場で最高の手作業による仕上げによってのみ可能となる最高のものを超越した例だ。Cal.L952.4ムーブメントは、オリジナルのCal.L952.2(合計684個)よりも部品点数が45個少なくなっており、これは文字盤デザイン上のパワーリザーブ表示が廃止されたことに少なくとも一因があると考えられる。文字盤デザインは、他の永久カレンダーと比較するとやや雑然としている。しかし、文字盤の12時位置にアウトサイズデイトを配したダトグラフルックがキープされているのは大きなポイントである。

Datograph Perpetual Tourbillon
ランゲのルーメンモデルを実際に見たことは数えるほどしかない(過去14年間で950本しか製造されていない)。それらはそのデザインで大きな注目を集め、現在ではパテックのようなブランドがRef.5316/50Pでスモークサファイアの外観を利用しようとしているほどだ。同じことがハニーゴールド素材にも言えるが、そのケース素材は非常に希少であり、コレクターにとっては所有することが誇りとなっている。2010年以来、この素材を使用した時計は1585本しか製造されていない。オーデマ ピゲが最近発表したサンドゴールドのロイヤル オークは、すぐにランゲのソフトなゴールドの色調との比較を連想させた。2大ブランドがランゲに最高のお世辞を贈るという事実が、このモデルがいかに特別なものであるかを物語っている。

それ以外の感想(と画像)については、後日に譲るとして、この時計はハンズオンレビューに値するものだ。

基本情報
ブランド: A.ランゲ&ゾーネ(A. Lange & Söhne)
モデル名: ダトグラフ・パーペチュアル・トゥールビヨン・ハニーゴールド”ルーメン”(Datograph Perpetual Tourbillon Honeygold “Lumen”)
型番: 740.055FE

直径: 41.5mm
厚さ: 14.6mm
ケース素材: 18k ハニーゴールド
文字盤色: サファイアクリスタル、コーティング
インデックス: アプライドファセットアワーインデックス、夜光プリントのタキメーター、夜光付きサブダイヤル、日付ディスク
夜光: 大量
防水性能: 明記されていないが、過去モデルから考えると3気圧防水が期待できる
ストラップ/ブレスレット: 手縫いのアリゲーターレザーベルト、ダークブラウン、18Kハニーゴールドのバックル付き

Datograph Perpetual Tourbillon Lumen
ムーブメント情報
キャリバー: L952.4
機能: 時、分、スモールセコンド表示、ストップセコンド付きトゥールビヨン、正確にジャンプするミニッツカウンター付きフライバック・クロノグラフ、タキメータースケール、アウトサイズデイト表示付き永久カレンダー、曜日、月、閏年、デイ/ナイト表示、ムーンフェイズ表示
直径: 32.6mm
厚さ: 9.0mm
パワーリザーブ: 50時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 1万8000振動/時
石和: 57、うち1石はダイヤモンド受け石
クロノメーター認定: なし
追加情報: レバー脱進機、ムーブメントは5段階で精密に調整されている、プレートとブリッジは無処理のジャーマンシルバー、装飾と組み立ては手作業

価格 & 発売時期
価格: 62万ドル(日本円で約9413万円)
発売時期: 今すぐ
限定: あり、50本(シリアル入り)

パテック フィリップが全ラインナップの防水性能を30mに統一

初めはケース素材がスティールからホワイトゴールドに変わったためだと思っていた。しかしその後、以前は120mの防水性能があった同じモデルのローズゴールド(5164R)も、今は30mまで減少していることに気づいた。カタログを見てみると、なんとノーチラスコレクションにも同じことが起こっていた。5990から5811まで、すべてのモデルが90mの防水性を失っていたのだ。何が起こったのか? 答えはパテック フィリップからのプレスリリースにある。

Patek 5164G
ダイバーズウォッチ? 今はもう30mまでしかない。

プレスリリースには、“お客様に提供する情報の均一性と明瞭性を確保するため、パテックフィリップ スーパーコピー優良サイトは防水性が認定されたすべての時計に対して、30mという新しい統一基準を導入することを決定しました。これは、空気中および水中で3気圧(水深30mに相当)という高圧下でテストされたものです”と述べている。

“この措置により、関連するすべてのモデルで同じ性能水準を保証することができ、お客様がその時計を着用して行う日常的な活動(手洗い、シャワー、入浴、水泳、その他の水中活動、30mまでのダイビングを含む)について、明確に理解しやすい情報を提供します。これは実際の使用状況にほぼ一致しています”

Patek 5326P and 5396G
パテックの5236PPと5396Gがアクアノート並みの防水性能に。

この変更は、顧客がパテック フィリップの時計を使用してできることとできないことについての混乱を解消することを意図していたのだろうが、逆に混乱が増してしまったようだ。ただし防水性についての質問に、明確な答えがあることはめったにないため、驚くことではない。この話題が記事で取り上げられるたびに、コメント欄で論争が起きる可能性が高い。過去の記事でも防水性能について取り上げたが、その際も各深度レーティングが何を意味するのかについて、厳密なガイドラインが存在しないとした。ある人は、30mというレーティングはリューズにかかる水しぶきの強さが規格を超える可能性があるので、シャワーを浴びるべきではないと言う。またある人は、100mの防水性能の時計でダイビングをするべきではなく、200mでなければならないと言うだろう(これは、レクリエーションダイバーにとって明らかに誤りである。通常、彼らは最大40mの深さまで潜る訓練を受けている)。

パテックにとって、これは技術的に時計のケースをアップグレードするような、全ラインナップにわたる完全な刷新ではない。これは技術的な変更ではなく、パテックが時計に圧力テストを行う際の実用的(そして哲学的)な変更に過ぎない。たとえば、Ref.5178G “カセドラル・ゴング”のミニッツリピーターや、Ref.6300 グランドマスター・チャイムのようなモデルが、突然防湿仕様から水泳可能な仕様に変わったわけではない。これらのモデルは“非防水”のままである。また、インライン永久カレンダー Ref.5326Pのような時計が、30mまでのスキンダイビングに適していると考えるべきではない。技術的には、パテックがそれが大丈夫であると明確に述べているが、行間を読むと、最後の文が示しているのは、パテックの時計がダイビングに最も役立つわけではないことを彼ら自身が知っているということである(ブランドはダイバーズウォッチを製造していない)。したがって、新しい評価は実際どのように時計が使用されているかを暗示しているのだ。

アクアノート 5164Aに長いあいだ憧れていた者として、時計の防水性能に関する長年の議論を総合的に考えると、この変更は確かに興味深い。アクアノートやノーチラスをダイビングに持っていくというのは最初から考えてもいなかったが、もし時計をプールに持っていっても、必要とする防水耐性の20倍はあるという安心感があった。多くの人にとって、防水性能の評価は安心感を意味する。この場合、数値は今は低くなっているが、水辺でのパテックの使い方がどう変わるかは想像できない。もし単に30mより深く潜る必要があるのなら、その場合はパテックにダイバーズウォッチをつくるよう説得するしかないだろう。

PATEK-PHILIPPE

スライが出品する“ドアノッカーズ”と、その他もろもろの時計をご紹介。

今週のオークションについてのリポートをまっとうにまとめるなら、まずこの事実についての話から始めるべきだろう。この時計はパテックでもっとも複雑な時計(20ものコンプリケーションを搭載している)であり、オークションに出品されたのはこれが初めてだ。そしてこの時計は、パネライとの関係性でよく知られているであろう、真の大スターであり、自他ともに認めるウォッチガイであるスタローンが所有するものだ。

 スタローンが2020年にフィリップスを通じて時計を販売したのちに、彼を招聘したサザビーズにとってこれは大きなチャンスだ。とてもクールな話だが、スタローンはYouTube上で、サザビーズを通じて販売しているすべての時計について、また(オールマン・ブラザーズの)グレッグ・オールマン(Gregg Allman)との偶然の出会いがいかに彼を時計の虜にしたかを雄弁に語っている。映像のなかでスタローンは6300Gを封を開けずに見せているが、これまで1度も着用したことがないという事実には眉をひそめる人もいる。

sylvester stallone grandmaster chime patek
パネライスーパーコピー 代引きスタローンのグランドマスター・チャイム。想定落札価格250万ドルから500万ドルの(日本円で約3億9000万〜7億8150万円)この時計は、今週のサザビーズ ニューヨークオークションに出品される彼の時計のひとつである。

「コレクターのひとりとして購入したんだ」とスタローンは映像のなかで語っている。「絵画のように丁重に扱っている……、まさに芸術品だ」。ランボーがRef.6300を身に着けていたら最高にカッコよかったんじゃないかって? もちろんそうだろう。しかし、スライ(スタローンの愛称だ)の首は私の腕より太かっただろうから、という理由だけで彼が腕時計をしていなかったことを非難するつもりはない。彼の話には情熱が感じられる。30年ものあいだ、時計と深く関わってきた彼の時計に対する思いは、きっと計り知れないものだろう。

 とにかく、スタローンは超大作映画のアクションスターであり、ノーチラス Ref.5711/1300A(ダイヤモンドのついたグリーンダイヤルのモデルだ)や、そのほかいくつかの時計を出品している。彼がパネライ、ロレックス、パテックなどの重厚な時計を“ドアノッカー”と呼んでいる(私はこの響きをすぐに気に入った)一方で、私の好みは明らかに華奢だ。そんな私から、今週ニューヨークで行われたオークションのなかで特に気に入った時計について少々と、購入時の注意点について解説していこう。

ロレックス初のオイスター クロノグラフ
rolex zerograph 3346
ロレックス ゼログラフ Ref.3346。想定落札価格5万〜10万ドル(日本円で約780万〜1562万円)。

 スタローンの小指にしっくりくるような時計をいくつか、サザビーズで見てみよう。ロレックスのゼログラフは、いくつかの理由から極めて重要なモデルである。初のオイスター クロノグラフであること、初の回転ベゼル搭載機であること、初の自社製クロノグラフムーブメントを採用していること、だ。

 また、ヴィンテージロレックスのなかでもとりわけ希少なモデルのひとつであり、これまでに10本も見つかっていない。しかも、この個体はカリフォルニアで最近発見されたもので、市場に出たばかりである。ゼログラフについてあまり多くは知られていないが、何らかのプロトタイプであったと考えられており、カタログや広告に掲載されていないのもそのためだと思われる。ロレックスの歴史における超クールな逸品が、わずか32mmのケースに凝縮されている。

 サザビーズではこのRef.3346の想定落札価格を5万〜10万ドル(日本円で約780万〜1565万円)としているが、参考までに、モナコ・レジェンドで別の個体26万6500ユーロ(日本円で約4500万円)で落札されている。

最初期のパテック フィリップ スティール製Ref.96
patek 96 sector dial calatrava
patek 96 sector dial calatrava
 今回紹介する時計には、ロレックスの歴史における重要な1本からパテックまでが揃う。Ref.96(通称クンロク)パテックにおいて最初のカラトラバであり、同時にブランド初の量産モデルであることは、すでに多くの人が知るところであろう。大げさだが、“パテックを救った時計”とさえ言われている。

 Ref.96は約40年間製造されたが、最初期の個体は、パテックが当初ペンダントウォッチ用に注文したルクルトの小さなエボーシュを使用していたために区別できる。世界恐慌のために、これらのムーブメントの一部はパテックが初代カラトラバに搭載するまで何年も使用されずに眠っていた。

 この時計は1936年に販売されたもので、JLCのムーブメントを使用している。さらに素晴らしいことに、スティール製で、美しいオリジナルのセクターダイヤルを備えている。ゼログラフと同様にオリジナルオーナーの家族が所有していたもので、スタローンの爪と同じくらい小さい。

 このRef.96の落札予想価格は3万ドルから5万ドル(日本円で約470万〜780万円)だが、ゼログラフのように最終的な着地点を予測するのは困難だ。とても重要で、希少で、美しい。でも、小さくて、ニッチで、すごく古くて、ちょっとボロボロだが、オリジナルのままでもある。つまり、私がヴィンテージウォッチに求めるものすべてを兼ね備えているのだ。

 そういえばもうひとつ、出どころの確かな小さな時計がある。それは、アメリカのジョン・パーシング(John Pershing)将軍に贈られたケースに美しいエナメル象嵌が施された小さな角型のカルティエで、パーシング家から直接譲り受けたものだ。パーシング将軍は1918年にルイ・カルティエ(Louis Cartier)から直接、史上初となるカルティエ タンクを受け取ったという都市伝説があるが、実際にそうだったという証拠はあまり残っていないようだ。それではご覧いただこう:パーシング カルティエ(想定落札価格は2万~5万ドル、日本円で約310万〜780万円)。

toledano and chan b1 sotheby’s
ケースにエナメルの象嵌が施された、1917年製のパーシング将軍のカルティエ(想定落札価格は2万~5万ドル、日本円で約310万〜780万円)。そして、オークションに出品されるトレダノ&チャン B/1のユニークピース(想定落札価格は6000〜1万2000ドル、日本円で約95万〜190万円)。

 サザビーズは、先月発表されたばかりの新ブランド、トレダノ&チャン B/1のユニークピースもオークションに出品する。銅が散りばめられたカーボンファイバー製ケースで、想定落札価格は6000〜1万2000ドル(日本円で約95万〜190万円)だ。

フィリップ・デュフォー デュアリティ
philippe dufour duality
デュフォーのデュアリティ。想定落札価格は80万~160万ドル(日本円で約1億2400万円〜2億4800万円)。

 フィリップスへ急げ。なぜって、今回のトップロットは、現代の独立系時計メーカーによる最高の時計のひとつ、フィリップ・デュフォーのデュアリティだからだ。

 1996年に発表されたデュアリティは、ふたつの独立したテンプを使用した史上初のダブルエスケープメントを搭載した腕時計である。これによりテンプがそれぞれの振動数を平均化することで、時計の精度がより向上するという仕組みだ。それからわずか数年後、この作品に触発されたジュルヌが世紀の変わり目に発表したレゾナンスを再考、復活させることになる。

 当初、デュフォーは25本を作る予定だったというが、デュアリティの製造、組み立て、調整が非常に困難であったため、最終的に9本しか作らなかった。デュアリティがどのように機能するのか本当に知りたいのなら、私たちがお手伝いしよう。

 フィリップスは2022年(ピンクゴールド、400万ドル、当時のレートで4億2200万円)と2017年(プラチナ製No.00、91万5000ドル、当時のレートで約1億5500万円)に、別に2本のデュアリティを販売している。今回の個体はホワイトゴールド製で、さらにラッカー文字盤とブレゲ針という仕様になっている。想定落札価格は80万~160万ドル(日本円で約1億2400万円〜2億4800万円)だ。

 また、インディーズ界隈では、HAJIME ASAOKAのトゥールビヨンのプロトタイプ、No.0の想定落札価格が12万~24万ドル(日本円で約1865万〜3730万円)という驚くべき数字を出している。

roger dubuis homage condoterri
ロジェ・デュブイのオマージュ コンドッティエーリ。想定落札価格は2万〜4万ドル(日本円で約310万〜625万円)。

 フィリップスのカタログにはこのほかにも、目玉とまではいかないものの思わず追記したくなるような興味深い時計がいくつかあった。

 まずはロジェ・デュブイのオマージュ コンドッティエーリ(ロット78、想定落札価格は2万〜4万ドル、日本円で約310万〜625万円)について。この時計については昨年書いたが、デュブイ史上最高の時計かもしれない。あなたが知っている現代のロジェ・デュブイから連想されるものをすべて取り上げて、その正反対のものを思い浮かべてみてもらいたい…、それがオマージュ コンドッティエーリだ。エナメル文字盤、“Bulletin D’Observatoire”の文字にジュネーブ・シール。もっと詳しく知りたいなら、この記事をチェックして欲しい。

 ラインナップにはレベルソ・ミニッツリピーターもあり、こちらは1994年の限定モデルとなっている。1991年にレベルソ誕生60周年を迎えた JLC は、その後10年間にわたり、6種類の“伝統的なコンプリケーション”を搭載したレベルソの限定モデルを6本、すべて500本限定で発表した。このミニッツリピーターは素晴らしいサイズであり、時計師エリック・クドレ(Eric Coudray)によるムーブメントを搭載している。90年代のレベルソについては、いつか完全なストーリーを書こうと心に決めているのだが……ご期待いただきたい!

heuer seafarer abercrombie chronograph
フィリップスNYに出品される、アバクロンビー販売のホイヤー シーファーラー(想定落札価格15~30万ドル、日本円で約2330万〜4660万円)。最後に取引されたのは2017年のことだ(右はクリスティーズ)。

 これはどうだろうか。アバクロが販売していたこのホイヤー シーファーラー(想定落札価格15~30万ドル、日本円で約2330万〜4660万円)が、クリスティーズが2017年に行ったアメリカン・アイコンズ(ジャッキー・ケネディのタンクが落札されたオークションだ)で出品されていたことを思い出したので紹介しようと思う。その当時は、6万ドル(当時のレートで約690万円)で落札されていた。今回、フィリップスは想定落札価格を控えめに見積もっており、1万5000~3万ドル(日本円で約235万〜440万円)としている。ニューヨークのオークションには、販売履歴をたどることができる時計も数多くある。しかし、これらのシーフェアラーは素晴らしい時計であるにもかかわらず、十分な評価を受けることはなかった。私は今回の1本がよい結果を出すことを願っている。

ulysse nardin split seconds vintage
1915年製、ユリス・ナルダンのマンモス級に巨大なスプリットセコンド(直径52mm)。フィリップスの想定落札価格は4万〜8万ドル(日本円で約620万〜1240万円)。

 最後に、大きくてイカしていて、古めかしいスプリットセコンドクロノグラフがお好みなら、1915年に製造されたこのユリス・ナルダンのスプリットセコンドモデルはまさに完璧な代物だ。52mm径の腕時計で、ギョームテンプを搭載した高級懐中時計用ムーブメントを内蔵している。重要なのは、これが懐中時計を腕時計として再ケース化したものではないということだ(えぇっ!)。わずか2本しか知られていないうちの1本で、もう1本はスティール製だ。もしあなたがユニバーサル・ジュネーブ カイレリのスプリットセコンドのようなものが究極のヴィンテージクロノグラフだと思っているのなら、そろそろ考え直すときかもしれない。

パテック フィリップ Ref.1578GM(General Motors)を簡単に紹介
 パテック フィリップ Ref.1578GMのストーリーは、ヴィンンテージウォッチのなかでも私が特に好きなもののひとつである。50年代を通じて、約20本のパテック フィリップがゼネラルモーターズの大物重役に贈られた。その多くは25年の勤続年数に対するものだった。パテックがこのように型番に企業名を加えて製造した、唯一の例かもしれない。ウェンガー社のケースは角ばった下向きのラグを持つが、Ref.1578GMはその黒い文字盤と放射状のアラビア数字のおかげで、通常のRef.1578とは一線を画している。これまでに見つかったのは、十数本だけだ。数年前、私は公に販売されたすべての個体を記録するという、脳を痛めつけるような作業を行った。

patek 1578gm
今週のクリスティーズで出品されるパテック Ref.1578GMと、2012年にクリスティーズが販売した、正しいものとして一般的に受け入れられている文字盤のサンプル。

ともあれ、私は今週のクリスティーズでパテック Ref.1578GMのような時計に出会って大いに興奮した。しかし、よく見てみたところ、購入を検討しているなら注意して欲しい。文字盤は黒だが、一般にオリジナルRef.1578GMの正統な文字盤と認められているものには見えない。特にスモールセコンドのレイアウトの違いとスティック針(通常、Ref.1578GMはリーフ針)に注目してもらいたい。何年にもわたって、より希少な(そしてより高価な)Ref.1578GMの仮面をかぶろうとするいくつかのノーマルRef.1578を目にしてきたが、これもそのひとつかもしれないと感じている。

 さらにまずいことに、クリスティーズは2017年に販売した前回の(正規の)Ref.1578GMから本ロットの説明をコピーペーストしてしまった。今回のロットの画像には、“C.F. Kirkland”と刻印されたケースバックがはっきりと写っている。しかし、ロットの説明には「この時計はK.P.スミス(K. P. Smith)氏が所有していたものです。この時計のケースバックにはGMCと刻まれています。“GMOO, K.P. SMITH, 1934-1964”です」とある。クリスティーズが販売した2017年の個体こそがK.P.スミス氏のものであり、この時計は違う。なんてこった!

 まあ、これは単にコピペミスだろう。しかし、Ref.1578GMのように歴史的な背景を持つ時計では、所有者の話や鑑定書、あるいはこの時計が本物であることを示す何か(何でもいい!)があればありがたい。何はともあれ、これはオークションハウスが悪意を持ってやっているのではなく、単に人手不足だという事例のひとつに見える。

richard mille rm56-02 sapphire tourbillon
クリスティーズのトップロット、サファイアクリスタル製でスケルトンのRef.RM56-02。想定落札価格は300万~500万ドル(日本円で約4億6445万〜7億7410万円)。憎めないのがまた憎い。

 最後に、クリスティーズでのトップロットはリシャール・ミルのトゥールビヨン サファイア Ref.RM56-02で、想定落札価格は300万~500万ドル(日本円で約4億6445万〜7億7410万円)だそうだ。2015年に発表されたわずか10本の限定モデルで、もっともリシャール・ミルらしい時計のひとつである。もしあなたが、苦労して稼いだ数百万ドルをこれに使うべきか、それともスライのグランドマスター・チャイムに使うべきかと自問しているなら、私が言える唯一妥当な答えは、「なぜ両方ではないのか」ということだ。

サザビーズ インポータントウォッチオークションの開催は6月5日で、オンラインセールは6月11日まで。フィリップスのニューヨーク・ウォッチ・オークション:Xは6月8日~9日。クリスティーズのインポータントウォッチオークションは6月10日開催で、オンラインセールは6月14日まで。