カシオ計算機が、2025年度グッドデザイン賞を受賞した。

カシオ計算機が、2025年度グッドデザイン賞を受賞した。受賞モデルは、G-SHOCKの”GA-V01”、サウナ専用時計の”サ時計”、アウトドアモデルの”PRO TREK PRJ-B001”だ。

カシオ計算機2025年度グッドデザイン賞

なお、これらの受賞モデルは、2025年11月に東京ミッドタウン(東京・六本木)で開催予定の”GOOD DESIGN EXHIBITION 2025”にて展示される予定となっている。

今回受賞した“カシオ計算機”は1946年に誕生。今年のグッドデザイン賞のテーマは”はじめの一歩からひろがるデザイン”だ。

G-SHOCKの“GA-V01”は、エッジの効いた外装と大型液晶を組み合わせた耐衝撃ウオッチ。針をシャフトに固定せず、磁力で支えるマグネティックホールディング構造を採用しており、衝撃を受け流す独自のメカニズムを備える。針の大型化と自由度の高いデザインを両立させ、耐久性と美しさを進化させたことが高く評価された。

カシオ計算機2025年度グッドデザイン賞
■Ref. GA-V01-1AJF。49.1×58.2mmサイズ。20気圧防水。2万1450円

そして、“サ時計 SAN-100H”は、サウナ専用として設計されたユニークなモデル。最大100℃までの環境で使用できる耐熱構造を備え、サウナ利用時に目安となる12分計機能を搭載。防水設計のケースや湿気を防ぐ素材選定に加え、着脱しやすいカールバンドなど、細部にまで配慮が施されている。サウナ文化を新たな角度から支える発想が評価されたという。

最後のアウトドアモデルPRO TREKの“PRJ-B001”は、スクエア型ベゼルが回転するロータリーガードベゼルを採用。

カシオ計算機2025年度グッドデザイン賞

丸型の文字盤との組み合わせが新鮮で、タフな印象を与えながらも街使いにもなじむデザインに。また、Bluetooth連携による時刻・位置記録機能も備え、アウトドアと日常をつなぐ新しいスタイルを提案した。今後も同ブランドの新作に注目したい。

最強のミリタリーウォッチ7選!タフで男らしい腕時計を紹介

武骨で無骨なデザインが魅力のミリタリーウォッチは、過酷な環境でも確実に機能する「最強」の腕時計として多くの人に愛されています。軍用時計として開発された高い耐久性と機能性は、アウトドア活動やサバゲー、そして日常使いまで幅広いシーンで頼れるパートナーとなってくれます。

この記事では、本格的な軍仕様のスペックに憧れる人から、タフで長持ちする時計を求める初心者の人まで、それぞれのニーズに応える最強のミリタリーウォッチを紹介します。デザインの無骨さと実用性を兼ね備えたモデルを詳しく見ていきましょう。

ミリタリーウォッチの魅力とは?

ミリタリーウォッチとは、もともと軍事用途のために開発された腕時計で、過酷な戦場環境でも正確に時を刻み続けるよう設計されています。現在では軍用だけでなく、優れた機能性とたくましいデザインが一般のユーザーにも高く評価されています。

ミリタリーウォッチ 一般的な腕時計
耐久性 高い(耐衝撃・耐振動・耐熱など) 中程度〜低い(落下や強い衝撃には弱い)
防水性 高い(100m〜200m防水、ISO規格準拠も多い) 生活防水〜50m程度が主流
視認性 高い(夜光針、反射防止ガラス、大きな文字盤) デザイン優先で視認性は低めのものも多い
操作性 グローブ装着時でも使いやすい大きめのリューズ 小型・薄型のため、操作性はやや劣る
素材・ケース ステンレススチール、樹脂、カーボンなど ステンレス・真鍮・レザーなど
ベルト NATOストラップ、シリコン、ナイロンなど レザー、メタル、ファブリックなど
デザイン 無骨・機能美を重視したミニマルデザイン 多様でファッショナブル
価格帯 1万円台〜数万円台(機能性とコスパ重視) 幅広い(安価なものからハイブランドまで)
主な用途 アウトドア、軍事、サバイバル、過酷な環境 日常使用、ビジネス、ファッションアイテム
ミリタリーウォッチの魅力は、機能性・耐久性・デザイン性の3つの要素が高次元で融合している点にあります。極限状況での使用を前提とした設計思想は、日常生活においても絶対的な安心感をもたらしてくれます。

軍用時計としての信頼性と実績
ミリタリーウォッチは、実際に各国の軍隊や特殊部隊で採用された歴史と実績を持っているモデルが多いです。戦場という生死を分ける現場で培われた信頼性は、どんな高級時計ブランドの謳い文句よりも説得力があります。民間向けモデルでも、軍用規格をベースとした設計思想が受け継がれており、本物志向のユーザーから絶大な支持を得ています。

実際の軍事採用モデルを身に着けることで、単なる時計以上の満足感と、確かな品質への安心感を得られます。これは他のジャンルの腕時計では味わえない、ミリタリーウォッチならではの魅力といえるでしょう。

過酷な環境に耐えるタフなスペック
ミリタリーウォッチの真価は、極限環境での耐久性にあります。防水性能では、一般的な日常防水の10倍以上となる200m防水以上を備えたモデルが多く、潜水作業や激しい雨の中でも安心して使用できます。また、落下や激しい振動に耐える特殊な内部構造を採用し、アウトドア活動中の予期せぬ衝撃からムーブメントを守ります。

極地での使用を想定した耐寒性能や、砂漠地帯での耐熱性能も備えており、温度変化による精度の狂いを最小限に抑えています。さらに、強力な磁場の影響を受けやすい軍事機器の近くでも正確に動作するよう、耐磁性能も強化されています。

これらの機能は登山やキャンプなどのアウトドア活動でも頼りになります。

無骨で男らしいデザイン
ミリタリーウォッチは、装飾を排除したシンプルな文字盤や、頑丈さを感じさせる厚めのケース、実用性を重視したラージサイズの時針・分針など、すべての要素が「強さ」を表現しています。

カラーリングも独特で、オリーブドラブやカーキ、マットブラックなど、軍用装備を彷彿とさせる色調が多用されています。カジュアルなファッションとの相性がよく、ジーンズやワークウェア、アウトドアギアとのコーディネートで存在感を発揮します。

NATOストラップと呼ばれる軍用ベルトや、ラバーストラップなどの実用的なベルト選択も、ミリタリーウォッチの魅力を高める要素です。これらのベルトは汚れや汗に強く、激しい活動でも安心して着用できます。

最強のミリタリーウォッチ7選
続いて、「最強」と言える理由を明記しながら、厳選したおすすめのミリタリーウォッチを紹介します。

ブライトリング ナビタイマー (A23322)

ブライトリングのナビタイマー (A23322)は、鮮やかなブルーの文字盤が特徴的で、パイロットウォッチの代表格として長年愛され続けているモデルです。ベゼルやインデックスの目盛り、クロノグラフのデザインなどから計器のようなメカニックな雰囲気を感じられ、本格的な航空機のコックピットを彷彿とさせます。

ケースサイズは42mmと標準的でありながら、ずっしりとした着用感を味わえる重厚感のある作りが印象的です。厚みのある武骨なモデルなので、男らしい腕時計を探している人に特におすすめできます。高精度なクロノグラフ機能は、パイロットの厳密な時間管理要求に応えるために開発されており、信頼性は軍用航空機でも実証されています。

回転計算尺を内蔵したベゼルは、燃料消費量や飛行時間の計算が可能で、実用性も兼ね備えています。ブライトリングの技術力と航空業界での実績が結集した、真のミリタリーウォッチといえるでしょう。

ブライトリング ナビタイマー (A23322)の商品詳細

ブライトリング ナビタイマー コスモノート フライバック (A22322)

ブライトリングのナビタイマー コスモノート フライバック (A22322)は、宇宙で昼夜を混同しないよう24時間で文字盤を1周するようデザインされた特殊なミリタリーウォッチです。NASAの宇宙飛行士によって実際に宇宙空間で使用された歴史を持ち、極限環境での信頼性が実証されています。

日付表示、クロノグラフ搭載で使いやすく、珍しい24時間表示の文字盤は、他の人と被らないエッジの効いたデザインになっています。フライバック機能により、クロノグラフの針を瞬時にゼロリセットして再スタートできるため、連続的な時間測定が必要な専門的な用途でも威力を発揮します。

宇宙という究極の過酷環境で使用された実績は、地球上のあらゆる状況での信頼性を保証するものです。無重力状態や極端な温度変化にも耐える設計は、地上でのアウトドア活動やサバイバル状況でも絶対的な安心感をもたらしてくれます。宇宙開発史に名を刻んだロマン溢れる1本です。

ブライトリング ナビタイマー コスモノート フライバック (A22322)の商品詳細

IWC スピットファイア UTC (IW325105)

IWCのスピットファイア UTC (IW325105)は、イギリスの空軍をはじめとした数多くの軍に納められていた由緒正しいミリタリーウォッチです。スピットファイアの名前は、第二次世界大戦で活躍したイギリス空軍の名戦闘機に由来し、勇猛果敢な精神を時計に込めています。

初心者から玄人まで幅広く人気のモデルで、着け心地のよさと存在感を兼ね備えた、マルチに活躍してくれる1本です。IWCの時計製造技術と軍用時計としての実用性が見事に融合したデザインは、シンプルでありながら力強い印象を与えます。

高品質なムーブメントは長期間の使用でも高い精度を維持し、メンテナンス性も良好です。軍用時計の王道を行く風格と品質をあわせ持つ、まさに「最強」の名にふさわしいモデルといえるでしょう。

IWC スピットファイア UTC (IW325105)の商品詳細

IWC フリーガー クロノグラフ デイデイト (IW370607)

IWCのフリーガー クロノグラフ デイデイト (IW370607)は、ドイツ空軍パイロットのために開発されたミリタリーウォッチです。「フリーガー」は、ドイツ語で「パイロット」を意味します。特殊金属のインナーケースにより、耐磁性が強化されており、軍用電子機器の強力な磁場の影響を受けにくい設計です。

クロノグラフ機能とデイデイト表示により、日常使いでも便利な機能が充実しています。大型のアラビア数字インデックスは視認性に優れ、パイロットが一瞬で時刻を確認できるよう配慮されています。

ドイツの精密工学技術が生み出した堅牢なケースと、洗練されたデザインが融合し、他にはない魅力がある1本です。

IWC フリーガー クロノグラフ デイデイト (IW370607)の商品詳細

ブレゲ アエロナバル タイプXX (3800ST)

ブレゲのアエロナバル タイプXX (3800ST)は、全体的に丸みのあるケースで、ミリタリーウォッチとして独特な存在感があるモデルです。スポーティーな印象ながらも高級感があるデザインでどんなシーンにも活躍します。フランス海軍航空隊のために開発された歴史を持ち、海上での過酷な任務に対応する高い性能を誇っています。

フランス軍の要求する厳格な品質基準をクリアした信頼性は、普段の使用においても絶対的な安心感があります。高級時計メーカーとしてのブレゲの技術力と、軍用時計としての実用性が融合した、贅沢で実用的なミリタリーウォッチです。エレガンスと堅牢性を両立した、大人の男性にふさわしい1本といえるでしょう。

ブレゲ アエロナバル タイプXX (3800ST)の商品詳細

ブレゲ トランスアトランティック (3820ST)

ブレゲのトランスアトランティック (3820ST)は、「タイプXX」シリーズに属するモデルの1つです。「トランスアトランティック」という名称は、大西洋を横断する飛行のためのパイロットウォッチという歴史的背景に由来しています。

連続して時間を計測できるフライバック機能やデイト表示機能を搭載しており、機能と武骨なデザインから男心をくすぐるミリタリーウォッチとして高い評価を得ています。最新の時計技術とクラシックなデザインが組み合わさった、ロマン溢れるモデルです。

ブレゲの卓越した時計製造技術により、高精度と高耐久性を実現し、歴史とロマンに彩られた真のパイロットウォッチの傑作といえます。

ブレゲ トランスアトランティック (3820ST)の商品詳細

ハミルトン カーキ アビエーション パイロット パイオニア クロノグラフ (H765820)

ハミルトンのカーキ アビエーション パイロット パイオニア クロノグラフ (H765820)は、オレンジのインデックスが目を惹く、軍用時計をモチーフにしたミリタリーウォッチです。ハミルトンは第二次世界大戦中にアメリカ軍に時計を供給していた実績があり、その軍用時計のDNAを現代に蘇らせたモデルとなっています。

クォーツ式のため使いやすく、日付表示、クロノグラフ機能搭載で機能性も充実しています。メンテナンスの手間が少ないクォーツムーブメントは、アウトドア活動や日常使いでの実用性を重視する人に最適です。

比較的手頃な価格でありながら、本格的なミリタリーデザインと確かな品質を提供するコストパフォーマンスの高さが特徴です。初めてミリタリーウォッチを購入する人にも、ベテランのサブウォッチとしてもおすすめできる、汎用性の高い1本といえます。

ハミルトン カーキ アビエーション パイロット パイオニア クロノグラフ (H765820)の商品詳細

レンタルならミリタリーウォッチを自由に試せる

いざミリタリーウォッチを購入しようと思っても、安い買い物ではないため、気軽に手を出しづらいのが現状です。さまざまなモデルを実際に使って比較してみたいと思う人も多いでしょう。

そのような状況下で、近年利用者が増えてきているのが、腕時計のレンタルサービスです。レンタルでは、購入を検討している腕時計の着用感を確かめたり、特別なイベントに合わせて高級時計を借りたりなど、さまざまな用途で腕時計を手軽に楽しめます。

実際に腕につけてみることで、カタログやWebサイトでは伝わらない質感や存在感を体験できます。重量感やベルトの装着感、文字盤の見やすさなど、購入前に知っておきたい要素を確認できるのは大きなメリットです。さまざまな機能やデザインを比較検討しながら、自分に最適なミリタリーウォッチを見つけるためのヒントにできるでしょう。

カリトケなら中古品の購入もできる
カリトケは、好きな腕時計を月額制でレンタルできるサービスです。6万人を超えるユーザーが登録し、多くの人が憧れの腕時計をシーンや気分に合わせて利用しています。

50ブランド1,300種類の中から気になるブランド腕時計を、4,800円(税込5,280円)から自由に試すことが可能です。もちろん今回紹介したミリタリーウォッチも、すべて取り扱っています。

カリトケでレンタルできる腕時計一覧

カリトケでは、商品が届いたその日から使用でき、返却期限はなく、メンテナンスも不要です。加えて、業界最安値水準の特別価格で、中古腕時計を提供しています。レンタルして気になった腕時計を、お求めやすい価格で購入できるのが特徴です。

まずはレンタルで大事なビジネスシーンや、結婚式のパーティー、購入前のお試しとして利用できるので、無料で会員登録してみてください。

ブライトリングの名作パイロットウォッチに、32mmと36mmの2サイズが用意された。

ブライトリングはこのたび、新たに36mm径(自動巻き)と32mm径(クォーツ)のより小ぶりなサイズのナビタイマーを発表した。そして、あえて言うならレディース向けのラインナップが充実している。もちろん、メンズにだっておすすめだ……、これは余計なコメントのような気もするが、時計界の平等とこの直径に対する肯定的なムーブメントのためにも言及しておく必要があると思った。

32mm径と36mm径からなる、新しいブライトリング ナビタイマーのほんの一角。

36mm径の新作ナビタイマーは時間表示のみとなっており、バーインデックスを備えた3色のメタリックダイヤル(ミントグリーン、シルバー、アンスラサイト)、またはラウンドカットのラボグロウン“ベター・ダイヤモンド”をセットしたホワイトのマザー・オブ・パールダイヤルが用意されている。

新しい自動巻きのSS製ナビタイマー 36を、ミントグリーンとグレー(アンスラサイト)の両方で試す機会を得た。どちらもクラシックなビーズベゼルと回転計算尺が特徴的だが、クロノグラフは搭載されていない! つまりこの新作は、あなたがどちらの派閥かによって、洗練されたグリーンか、あるいはメタリックさを打ち出したグレーかに分かれることになる。

オリジナルのナビタイマーは50年代初頭にウィリー・ブライトリング(Willy Breitling)氏によって考案され、 パイロットたちがアナログ計算機として使用していた。彼はこれをナビゲーションタイマーと呼んでいたが、やがて現在のような愛称に変わっていく。ケース径は41mmと当時としては大型で、飛行中にダイヤルに表示されるすべての情報が読みとれるよう、十分な大きさに設定されていた。ナビタイマーはベゼルに回転計算尺を備えており、クロノグラフと併用することでコックピット内で素早く計算ができるようになっていた。そのため、これらの新モデルでクロノグラフが失われたことで、ナビタイマー本来の機能が発揮される余地はほぼゼロとなった。しかし、私は機能性よりルックスを第一に考えているので、これが冒涜的かどうかは皆の判断に委ねたいと思う。

新しいナビタイマー 36は、COSC認定を受けたブライトリング製キャリバー17を搭載し、3本の針と自動巻き機構を備えている。そして、ブレスレットとストラップの両方が用意されている。

2020年、ブライトリングはナビタイマー オートマティック 35を発表した。以前カーラがこのモデルのレビューで「ブライトリングはこれまでも、そしてこれからもコンシューマーにフォーカスしたメーカーである」と説明したように彼らの使命は明らかで、現在の市場トレンドに沿って既存のアイデアを発展させ、それをできるだけ多くの消費者にフィットさせることである。この時計は女性向けに作られているが、男性の時計愛好家による小さなサイズに対する新たな需要にも合致している。

批判的に聞こえるのが怖いので“萎縮させるような”表現をするのはためらわれるが、ここではあえて断言しよう。確かにデザインは考慮され、バランスが取れている。しかし、時計業界に身を置く女性として、このようなことに対して批判的であることが私の仕事である。(手首が細い私たちにとって)着用しやすいサイズで作られたものはありがたいが、マザー・オブ・パールやダイヤモンドのインデックスにはうんざりする。

Breitling Navitimer 36
しかし、この新しいラインナップは誰でも何かしら合うものがあるから大丈夫だ。私は36mm径で、ダイヤモンドがまったく使われていないミントまたはグレーのダイヤルをチョイスした。デモクラティック(大衆的)なアプローチとはすべての人のために何かを作ることだと思うし、ブライトリングが今回行ったのはまさにそれだ。バラエティに富んだ提案には脱帽だ。驚くべきことに、女性ごとに好きなものは違っているようなのだから。

クロノグラフが省略されたことについてはあまり深く考えないようにしているが(ブライトリングが36mm径でクロノを作れることは知っている)、既存の製品の長所を縮小によって変えてしまったのか、それともまったく新しい製品を作ったのかには疑問が生じている。

基本情報
ブランド: ブライトリング(Breitling)
モデル名: ナビタイマー
型番: A17327361L1A1、A17327361L1P1、A17327211G1A1、A17327211G1P1、A17327381B1A1、A17327381B1P1

直径: 36mm
厚さ: 11.42mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤色: ミントグリーン、シルバー、アンスラサイト
インデックス: アプライド
夜光: あり
防水性能: 30 meters
ストラップ/ブレスレット: フォールディングクラスプ付きSS製7連ブレスレット、またはフォールディングバックル付きグリーン、ボルドー、アンスラサイトカラーのアリゲーターストラップ(18/16mm幅)

ムーブメント情報
キャリバー: ブライトリングキャリバー17
機能: 時・分・秒表示
直径: 25.6mm
厚さ: 4.6mm
パワーリザーブ: 38時間
巻き上げ方式: 自動巻き
巻き上げ方式: 2万8800振動/時
石数: 25

価格 & 発売時期
SSケースとレザーブレスモデルが63万2500円、フルSSモデルが66万5500円、コンビケースとレザーブレスモデルが88万5500円、コンビケースとコンビメタルブレスモデルが121万円、ゴールドケースとレザーブレスモデルが162万8000円、フルゴールドモデルが415万8000円(すべて税込)

ミリタリーウォッチの分野で知られる時計が、この秋新たな“冒険”へと旅立つ。

スイスの本格時計に少しでも憧れたことがあるなら、ハミルトンのカーキ フィールドコレクションを一度は目にしたことがあるだろう。特に、アイコン的存在であるカーキ フィールド メカはミリタリーウォッチを語るうえでは欠かせない名機であり、幾度かのアップデートを経てアメリカの軍用時計の歴史を今に伝え続けている。視認性に特化したシンプルなインデックスや飾りっ気のないケース形状は、第二次世界大戦時に短期間で大量生産を行うための意匠であったり、今では当たり前の秒針停止機能も作戦開始前に“ハック!”の掛け声で時計を動かして足並みを揃えるために搭載された歴史があったりと、1本の時計に秘められたバックボーンを挙げると枚挙にいとまがない。

 そんなカーキ フィールド メカ以外にも、カーキ フィールドコレクションに属する時計には(キングやオートクロノなど)軍モノテイストが強いモデルが揃っている。それゆえに、僕らは同シリーズを語るときはミリタリーウォッチという文脈を前提に話を始めるのだが……、この秋、カーキ フィールドの新作でその認識を改める必要が生じた。それが、9月22日(金)に発売されたカーキ フィールド エクスペディションである。

 カーキ フィールド エクスペディションは37mm径と41mm径の2サイズ展開で、それぞれにブラック、ホワイト、ブルーダイヤルにレザーストラップを組み合わせたものと、ブラックのブレスレットバージョンの4モデルが用意されている。“Expedition=遠征、調査”の名前からわかるかもしれないが、今回のテーマはアウトドアであり、探検である。戦場から雪山、砂漠、未開のジャングルへと、文字通りフィールドを変えた形だ。

 先日、ハミルトン・インターナショナルCEOであるヴィヴィアン・シュタウファー氏に今回の新作ついて直接話を伺う機会があった。「カーキ フィールドコレクションは、ミリタリーウォッチとしての強いDNAとスピリットを持っています。しかし、今回はトレンドであるアウトドアやアドベンチャーの空気を落とし込み、エッセンスは残しながらもミリタリーの世界から離れた新しい時計を作りたかったんです」。なるほど、確かに夜光塗料を塗布した時分針や、同じく夜光塗料による大ぶりなアラビアインデックスには同シリーズらしい視認性向上へのアプローチが感じられるように思う。しかし、主張のあるコンパスデザインの両回転ベゼルにより、その顔立ちは一気にアウトドアテイストへと振れている。

 ベゼルにコンパス機能を備えた時計は数こそ多くないものの、各社からリリースされている。例を挙げるならば、セイコー プロスペックス(SRPD31など)やシチズン プロマスターのエコ・ドライブ アルティクロン、タイメックスのエクスペディション ノースシリーズなどだろうか。これらはいずれも過酷な自然環境下で活躍することを前提としたプロユースウォッチで、その顔立ちを見れば僕らはすぐに「ああ、これは探検用の時計なんだな」と理解できる。カーキ フィールド エクスペディションも、サテン仕上げの分厚いコンパスベゼルを備えたことで、アウトドアを意識した時計であることを強くアピールしているように思う。

 念の為に言っておくと、コンパスベゼルは決して飾りではない。スマートフォンの電波も届かないような山奥や僻地で、きちんと活躍してくれる。アナログウォッチを愛用するアウトドアマンにとっては耳にタコができるほど聞いた話かもしれないが、その使い方を一応解説しておきたい。

 まずは、太陽を確認する。そして、時針を太陽の方角に合わせる(より正確に方角を知りたいなら、ペンなど細いものの影に合わせるようにするといい)。そのとき、時針と12時のインデックスのちょうど中間が南ということになる。あとはベゼルを回転させて“S”を南に合わせれば、方位がわかるという寸法だ。普通に生活するうえで必要のない機能と言われればそれまでだが、ナビタイマーの回転計算尺や、第3時間帯を示すGMTウォッチの24時間表示ベゼル、パルスメーターにロマンを感じるなら、きっとその価値を理解できるはずだ。

 ちなみに、ミニマルさと視認性という点でカーキ フィールドらしさは匂わせつつも、今作においてベースとなったアーカイブは存在しないとヴィヴィアン氏は言う。「復刻などヒストリカルなトレンドがあることも理解していますが、カーキ フィールド エクスペディションは現代のニーズとモダンなインスピレーションによってイチからデザインした時計です。カスタマーの声を受け、ラグシェイプはつけやすいよう短めに変更。さまざまな要望に応えられるようにサイズも、スポーツウォッチらしく視認性も高い41mm径と、グッと小ぶりな37mm径を用意しました。また、今作は80時間のパワーリザーブを持つ自動巻き Cal.H-10を搭載しています。ミリタリーウォッチが手巻き、というのは当たり前すぎて、これまでとは異なるものを作りたかったのです」

 2サイズを並べてみれば、サイズの差は歴然だ。両サイズともラグ幅が20mmとなっていることもあり、37mm径のケースがより小ぶりに見える。ちなみに、ラグ幅はカーキ フィールド メカをはじめとした多くのカーキ フィールドコレクションと同じだ。すでにほかのカーキ フィールドを所有しているなら、きっとストラップの付け替えも楽しめると思う。ここは個人的にポイントが高いと思った。

 ケースにはほかのカーキ フィールドコレクション同様、特に面取りなどは施されていない。ベゼルも含めた全面サテン仕上げには、ツールウォッチとしてのインダストリアル感が漂う。厚さは37mm径モデルが10.45mmで、41mm径モデルが11.5mmと、回転ベゼルを備えた自動巻き時計としてはやや控えめでコンパクトだ。ラグトゥラグも37mm径モデルが44.5mmで、41mm径モデルが48mmとなっており、その寸法も寄与してか手首への収まりもいい(実際の着用イメージは以下の写真を参照して欲しい)。個人的には、せっかく互換性が高いラグ幅なのだからクイックチェンジ機能を搭載してくれていればさらによかったとは思う。

 裏蓋はカーキ フィールド メカとは異なり、スケルトンバックとなっている。ムーブメントが動く様子を見たい機械式時計初心者にも刺さる仕様は、新たなフィールドに挑戦するモデルとして合理的なチョイスだと思う。既存モデルとの明確な違いでもあり、ハミルトンユーザーにとっても新鮮に映るポイントだろう。事実、ヴィヴィアン氏は「従来のカーキ フィールドコレクションを手に取ったことがある人にも知ってもらう、いい機会になればと思っています。カーキ フィールドはハミルトンならではのもので、替えの効かないコレクションです。このカーキ フィールド エクスペディションで、その世界観を知ってもらえればと思います」と語っている。

 なお、僕個人として一番感動したのはメタルブレスだった。そもそもだが、ハミルトンにおいてはメタルブレスのモデル自体が少ない(ヴィヴィアン氏いわく、全体の3割程度なのだとか)。ブランドとしてNATO、レザーブレスに注力するなか、今作のメタルブレスの出来は素晴らしく感じた。形状としては、カーキ フィールド チタニウム オートと同じものだと思う。無垢のSS素材はひとコマひとコマが肉厚で重厚感があり、ケースの存在感と重量とのバランスもいい。また、プッシュ3つ折り式のバックルは両端が斜めにカットされており、それ自体にも厚みがあって高級感が漂う。コマ間のガチャつきもない一方で、手首に沿うようなしなやかさも併せ持っている。価格はサイズを問わずブレスレットが16万5000円、レザーストラップが15万2900円(ともに税込)となっているが、差額が1万2000円程度で本当にいいのかと疑いすら持ってしまった。

 37mm径モデルの着用イメージは、写真のとおりだ。僕の手首周りは17cmと日本人男性の平均をいっているが、ラグトゥラグも手首のうえにきれいに収まっていて、サイズのうえでは申し分ない。昨今のスモールウォッチトレンドにも合致していて、すでに38mm径のカーキ フィールド メカに慣れ親しんでいる層にもしっかりマッチすると思う。

 ただ、唯一心残りだったのはレザーストラップの強靭さだ。もちろんこの時計はドレスウォッチではないし、最初から手首に馴染むようなしなやかさを求めるのは野暮だ。加えて、少しでも分厚いほうがツールウォッチとして長寿命でもあるだろう。しかしそれをおいても、このレザーストラップは頑固だった(ラグ付近が厚さ3mmでバックル部分が厚さ2mmと、着用感のための調整がされてはいるが……、手首に食い込んでいる様子がわかるだろうか)。レッド・ウィングのアイリッシュセッターのように、あるいはホワイツのスモークジャンパーのように、使い込んでいくうちに肌に馴染んでいくものだとは思う。しかし、メタルブレスのしなやかさと比較するとどうしても気になってしまった。

 以下は41mm径のモデルの着用写真だ。ラグの短さにこだわったというヴィヴィアン氏の言葉もあったが、実際に手首に巻いてみると41mmというサイズを感じさせない。メタルブレスの柔軟さもあるだろうが、40mm未満の小ぶり時計に傾倒しつつある僕も、決して大きすぎるとは思わなかった。むしろ、視認性に優れる分、メタルブレスモデルでは41mm径のほうが適正であるようにも感じられた。今回の新作を貸し出してもらうまでは自分で購入するなら37mm径モデル一択だと思っていたのだが、その考えは大きく揺らいだ。何度も言うが、それほどブレスの出来がよかったということでもある。

 余談だが、CEOのヴィヴィアン氏は41mm派だという。「私はマウンテンガイ(山男)です。週末にはハイキングに出かけますし、バイクでの遠征も楽しんでいます。また、昔ながらの感性を持つ男性なのでビッグなものがいいとも思っています。もちろん、スモールウォッチのトレンドも理解していますけどね」。僕は決してアウトドアマンでもなければマウンテンガイでもないが……、この41mm径は正直“アリ”だと思った。サイズが大きくともデザイン的に間延びした印象がなく、詰められたラグトゥラグの設計によって、収まりも良好だった。僕と同じくらいの手首サイズの人ならば、個人のテイストによってふたつのサイズ、どちらがよいか選べばよいだろう。

「カーキ フィールド エクスペディションは、今後数年のスパンで成長させていくコレクションです。素材、ダイヤル、デザインの面でリモデルを行いつつ、今後も何かしら新たな取り組みを行う予定です」。ヴィヴィアン氏はそう語るが、ミリタリーの路線に沿わないカーキ フィールドコレクションの新しい試みとして、今モデルはすでに相当な完成度を持っているように僕は感じている。素材に実用的なチタンを採用するのか、ノスタルジックなブロンズで仕立てるのか……、はたまたNATOへの換装やPVD によるオールブラック化を図るのか……、妄想は膨らむが、近いうちにハミルトンからその答えをもらえることは間違いない。聞けば、従来のカーキ フィールドコレクションもアウトドアに寄せた提案を行うつもりだという。復刻に注力するブランドも多いなか、新たな提案を続けるハミルトンは稀有な存在だが……、インタビュー中にヴィヴィアン氏は「未来に残り得るであろうインスピレーションを、今作っているのです」と言った。将来参照するべきアーカイブを今作る。未来に向けた挑戦を続けるその姿勢はとても尊く、ただでさえプロダクトとして優れるカーキ フィールド エクスペディションを所有する意味を示してくれるものだと思う。

ハミルトン カーキ フィールド エクスペディション。直径37mm×厚さ10.45mm、直径41mm×厚さ11.5mm、ラグからラグまでは44.5mm、48mm、100m防水。ステンレススティールケース、サファイアクリスタル風防。ブラック、ホワイト、ブルーダイヤル。Cal.H-10、80時間パワーリザーブ、時・分・センターセコンド、コンパス式両回転ベゼル。ラグ幅20mm、レザーストラップ、メタルブレス付き。価格はメタルブレスが16万5000円、レザーストラップが15万2900円(ともに税込)。

ブランド史上、そして世界最高峰のぜんまい駆動式の腕時計。

日本人として僕が毎年楽しみにしているのが、我らがグランドセイコーの新作です。2022年には日本ブランドとして初めてこの舞台に参加し、自社初の複雑機構を備えたKodo コンスタントフォース・トゥールビヨンを発表。2023年には自社製自動巻きハイビート機械式クロノグラフのテンタグラフ、2024年には手巻きハイビートキャリバー搭載の白樺ダイヤルモデルをリリースし、毎年国内外で大きな話題を集めてきました。

 そして迎えた2025年、常に挑戦を続けてきたグランドセイコーから、グランドセイコー エボリューション9 コレクション スプリングドライブ U.F.A.が発表されました。モデル名にあるU.F.A.は“Ultra Fine Accuracy”の略で、ぜんまい駆動式で年差±20秒という異次元の精度を誇ります。今回、僕はこの時計を2週間にわたって毎日着用し、その実力をじっくりと確かめる機会を得ました。

 ただし本作を詳しく見ていく前に、なぜこのブランドがここまで精度にこだわり続けてきたのか──まずはその“精度への追求”の歩みを振り返っておきたいと思います。

精度追求というDNA

初代グランドセイコー

 グランドセイコーが誕生したのは1960年。「世界に通用する高精度で高品質な腕時計を作り出す」という理念のもとに生まれました。初代グランドセイコーでは、スイス・クロノメーター優秀規格に準じた独自の社内検定を設け、その試験をパスした個体だけが歩度証明書とともに世に送り出されたのです。

 そして1966年。グランドセイコーは、スイス・クロノメーターの検査基準を上回る自社の精度規格を制定し、さらに高みを目指していきます。スイス天文台コンクールへの積極的な挑戦や、毎秒10振動のハイビートムーブメントの開発──そのすべては、ぜんまいを動力とする時計の精度を極限まで高めるための挑戦でした。

グランドセイコー 61GS V.F.A.

 1969年には、“Very Fine Adjusted”、通称「V.F.A.」と呼ばれる特別調整モデルが登場します。その精度は月差±1分以内。当時、世界最高レベルを誇る腕時計でした。そして今回の「U.F.A.(Ultra Fine Accuracy)」という名称は、このV.F.A. に代表される精度追求の歴史から着想を得たものです。

 しかし、グランドセイコーの探求はそこで終わりません。1970年代後半、機械式のぜんまい駆動に、クォーツ開発で培ったテクノロジーを融合させるという革新的な構想が動き出しました。それこそが「スプリングドライブ」の始まりです。

自動巻きスプリングドライブ キャリバー 9R65

 1999年に最初のスプリングドライブが発表され、2004年には自動巻きで72時間のパワーリザーブを誇るグランドセイコー専用設計のCal. 9R65が誕生しました。機械式の魅力と革新的なテクノロジーを融合させたスプリングドライブムーブメントは、それまでの機械式ムーブメントの精度を大きく超え、平均月差±15秒(日差±1秒相当)を実現。グランドセイコーは腕時計の精度を、まさに新たな次元へと引き上げていったのです。

 こうして振り返ってみると、グランドセイコーがいかに精度への挑戦を続けてきたかがわかります。そして2025年、ついにその歴史の集大成ともいえる存在が登場しました。それが、スプリングドライブ U.F.A.です。

 月差や日差といった従来の基準を超え、年差±20秒という、ぜんまいを動力とする腕時計としては世界最高精度を実現しました。この数字を初めて耳にしたとき、僕は正直「にわかには信じがたい」と思いました。実機を手に取ってみると、その背景にある技術と執念に圧倒されるばかりでした。

グランドセイコー公式サイト

 
グランドセイコー スプリングドライブ U.F.A

SLGB003(左)とSLGB005(右)。

 グランドセイコー スプリングドライブ U.F.A.は、年差±20秒という驚異的な精度を誇る新世代スプリングドライブです。ケース径は37mm、全長も44.3mmとコンパクトで、細腕の僕にとって待望のサイズ感でした。ちょうどレビューのタイミングで、バイオレットカラーのダイヤルが印象的な限定モデルSLGB005の発売が発表されましたが、僕が選んだのはSLGB003。日常生活で毎日着用しながら、その性能と存在感をじっくりと確かめました。

ムーブメント

ローターには、年差精度を実現した証として「SPRING DRIVE ULTRA FINE ACCURACY」の文字が刻まれている。

 シースルーバック越しに姿を現すのは、グランドセイコーの新世代スプリングドライブムーブメント「Cal. 9RB2」です。ムーブメント全体にはグランドセイコー独自の霧氷仕上げが施されており、北アルプスに広がる霧氷を思わせる繊細で独特な質感が印象的です。

 本ムーブメントは、冒頭でも触れたとおり、ぜんまい駆動式の腕時計としては世界最高となる年差±20秒という驚異的な精度を誇ります。これはCOSCやマスタークロノメーターの認定をはるかに超えるものです。スプリングドライブは動力にぜんまいを用いながら、クォーツ式時計で使われるICと水晶振動子の信号を組み合わせた独自の調速機構を備えていますが、Cal.9RB2ではその仕組みが大きく進化しています。

新設計のIC真空パッケージ。

 水晶振動子は温度や湿度、重力の影響を受けて周波数がわずかに変動し、さらに製造時に残った内部応力が経年で解放されることで誤差を生みます。9RB2では、こうした誤差を抑えるために3ヵ月間の入念なエージングを行い、水晶振動子の安定性を高めています。

 さらに革新的なのが、新設計ICとの真空パッケージ化です。水晶振動子とICを真空環境で封入することで湿度や静電気、光など外的要因の影響を排除し、回路も短縮化。省電力化が実現されたことで、1日あたり540回という高頻度の温度補正が可能となりました。これにより、従来はスプリングドライブでは困難とされた温度補正機能を実用レベルで搭載できたのだといいます。

緩急スイッチ

 加えて、今回初めてスプリングドライブに緩急スイッチが導入されました。これは従来、機械式のように精度調整機構を持たないクォーツ式において、例外的にグランドセイコーの9Fクォーツに採用されてきたものです。経年によってわずかに進みやすい、遅れやすいといった“癖”を補正できる仕組みで、実際に調整が必要となることは稀ですが、「いつでも補正できる」という安心感を与えてきました。Cal. 9RB2もその思想を受け継ぎ、長年の使用で生じるわずかなズレをアフターサービスで補正可能に。精度を支える新たな信頼の仕組みとして位置づけられています。

スプリングドライブ U.F.A. Cal. 9RB2

 これらの技術を詰め込んだムーブメントは、直径30mm、厚さ5.02mmという非常にコンパクトなサイズながら、72時間のパワーリザーブを確保しています。さらに耐磁性能の確保にも新たな工夫が加えられました。従来はムーブメント外に「文字板受リング(耐磁板)」を設けていましたが、それを廃止し、耐磁部品をムーブメント内部に組み込む設計を新たに確立。その結果、十分な耐磁性能を維持しつつ、ケース径37mmという小型化を実現することができたのです。

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ケースとブレスレット
 本作はエボリューション9 コレクションに属し、そのデザイン哲学は1967年の44GSで確立されたグランドセイコースタイルを源流としています。2020年に現代的に再解釈され、いまや同社のモダンデザインの象徴となったこのスタイルは、ケースとブレスレットにその特徴が色濃く反映されています。

エッジの効いたシェイプに鏡面仕上げと筋目仕上げが組み合わされたデザイン。

 エボリューション9スタイルは、グランドセイコースタイルの核となる思想と鋭いエッジの効いた造形を受け継ぎつつ、薄さや装着感が徹底的に追求されたデザインです。陰影を巧みに操ることで立体的なグラデーションを描き出し、多数の平面には鏡面仕上げと筋目仕上げを組み合わせています。その境界には定評のあるザラツ研磨のシャープなエッジが走り、グランドセイコーらしさを強調しています。さらにケースの重心を下げ、ラグ幅を広げることで装着時の安定性を高め、グラつきを抑えた設計もエボリューション9スタイルならではです。

 今回のモデルでは、その哲学が直径37mm×厚さ11.4mmという小径ケースに凝縮されています。一般的にケースが小さくなると厚みが強調されがちですが、スプリングドライブ U.F.A.では側面のデザインバランスを見直し、さらにボックス型サファイアガラスを採用することで金属部分を薄く見せる工夫が施されています。僕が試したSLGB003はブライトチタン製で、通常のチタンと比べて、より明るい輝きと高い硬度を持ち、ステンレススティールよりも約30%軽量です。一方、限定モデルのSLGB005はエバーブリリアントスチール製。耐食性に優れ、美しい白い輝きを有する高性能ステンレス素材が採用されています。隣同士で並べてみると、金属素材のわずかな色味の違いが感じ取ることができます。

 本作が発表されたWatches & Wondersで大きな注目を集めたのは、精度だけではありません。もうひとつの革新は、新開発の微調整機能付きバックルです。専用工具を使わずに簡単に長さを変えられるこの仕組みは、長年グランドセイコーを追いかけてきたコレクターなら、どれほど待ち望んでいたか。海外のジャーナリストやコレクターのあいだでも大きな話題となり、なかには「年差±20秒という圧倒的な精度以上に、日常で実感できるこの機能こそが最大のニュースだ」と語る声もあったほどです。

 調整幅は2mm刻みで最大6mm。日常のわずかな手首の変化に柔軟に対応するだけでなく、コマをひとつ外すときつく、足すと大きすぎる──そんな微妙なサイズ感の調整にも応えてくれます。快適性と実用性を大きく引き上げる仕組みと言えます。

 操作方法は非常にシンプルです。12時側のブレスレットを引き起こし、そのまま少し奥に押し込みながらスライドさせるだけ。これだけでスムーズに微調整が完了します。現在、微調整機能付きバックルが採用されているのはブライトチタン製のSLGB003のみで、エバーブリリアントスチール製の限定モデルSLGB005のバックルには18Kピンクゴールド製のGSロゴワッペンがあしらわれ、特別感を演出しています。