ヴァシュロン・コンスタンタン トラディショナル・トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイスが登場。

今の時計業界はオープンダイヤルの真っ只なかにいると感じる。

A.ランゲ&ゾーネ ルーメンコレクションの成功に始まり、サファイアクリスタル文字盤を備えたパテックの新作、5316/50Pの登場に至るまで、再び流行したともいえるものに皆飛びついているようだ。

ヴァシュロン・コンスタンタン トラディショナル・トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイスのイメージ
しかしヴァシュロン・コンスタンタンにとって、この素晴らしいオープンダイヤルやオープンワークのムーブメントをつくることは、以前と変わらない体制であるようだ。盛り上がりを見せるWatches&Wondersのなか、新作のトラディショナル・トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイス(なんと口数の多いことか)のリリースは、あまり注目を集めることはなかった。今こそそれを訂正するときだ。

時計の世界で本格的な活動を始める前から、ヴァシュロン・コンスタンタン最大の強みのひとつは、ブランドの歴史を踏まえつつも、それにとらわれずに1歩先を行く優れたテクニカルウォッチを作ることだと、私は信じて疑わない。ただ昨年発表された222やオーヴァーシーズの需要(ほかの高級ステンレススティール時計のように)に対して、人々はヴァシュロンが得意とするものを見失っているのではないだろうか。

ヴァシュロン・コンスタンタン トラディショナル・トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイスのイメージ
今回のWatches & Wondersで、ヴァシュロンがもう1型、SSでできた別の222を発表すると確信(というより希望を抱く)していた人は、マーケティングの観点に立つと、それが信じられないほどのミスだったということを理解していないだろう。もちろんすぐに売り切れてしまうが、イエローゴールドの222のウェイティングリストはおそらく孫の代まで引き継がれそうなほどの状態だし、世界3大ブランドの生産数はすでに驚くほど限られている。ではどうすればいいというのだろう? 代わりにヴァシュロンは基本に立ち返った。少なくともその基本とは、独自のやり方で、複雑なものをつくるということである。

ヴァシュロン・コンスタンタン トラディショナル・トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイスの文字盤
新しいトラディショナル・トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイス(略してTTRDO)は、この複雑機構が成功したというだけでなく、このブランドが得意とするもうひとつの分野である視認性においても成功したと思う。優れた視認性という点において、既存のオーヴァーシーズ・エクストラフラット・パーペチュアルカレンダー・スケルトンは、オープンフェイスダイヤルを採用した私のお気に入りの時計だ。新しいTTRDOは完全なるスケルトンダイヤルではないにせよ、その流れを汲んでいる。本来であれば技術的なことから始めるべきなのだろうが、搭載されたすべてを見ることができるオープンダイヤルを無視してしまうのはおかしいためここから始めよう。

ヴァシュロン・コンスタンタン トラディショナル・トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイスの文字盤
ヴァシュロン・コンスタンタン トラディショナル・トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイスの12時位置寄り
ヴァシュロン・コンスタンタン トラディショナル・トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイスの6時位置寄り
オープンフェイスのサファイア文字盤には、文字盤全体を囲むレイルウェイミニッツトラックと、文字盤の8時36分から3時24分まで扇形に広がったギヨシェ装飾があり、それに沿うようにレトログラード式の日付表示をセットしている。またゴールド製のバーインデックスを、文字盤の空いたスペースに覆いかぶせるようにレイルウェイ上に配置。レイルウェイをはじめ、フルーテッドの刻みが設けられた裏蓋、スリムなベゼル、ファセットされたドフィーヌ針が、伝統的な、いやトラディショナル(コレクション)を構成している。レトログラード式のデイト表示は、18Kの黒塗りのゴールドでつくられた針と白い矢印の先端で指す。そして文字盤のオープンフェイスデザインに合わせるべく、文字盤上部のデイト表示には、手作業によるスレートグレーの表面処理が施されているのを確認できる。最も配慮が行き届いていると思うのは、手彫りのギヨシェで装飾した地板の下部からわずかに見える文字盤と、見事にマッチしている点だ。完全なる文字盤は存在しないのに、そうあるかのように見せる錯覚はさすがだ。さらに光の加減によってはグレーからブラウンに変化する仕上げなど、見る人を飽きさせないのもポイントだ(もちろん手伝いも必要ない)。

ヴァシュロン・コンスタンタン トラディショナル・トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイスの裏蓋
さらに近くで見ると時計の核心に触れることができる。ジュネーブ・シールが刻印された自社製ムーブメント、2162 R31は、242点の部品を用いて自動巻きのためのペリフェラルローターを実現。ムーブメントの厚さは6.25mmで、ヴァシュロンを代表するふたつの複雑機構、レトログラードデイトとトゥールビヨンを搭載し、トゥールビヨンのキャリッジにはスモールセコンドを配している。文字盤側と裏側には、NAC処理でスレートグレーに仕上げたジュネーブストライプを、地板には面取りを施した見ごたえのあるディテールを備えているほか、ムーブメントは1万8000振動/時で動作し、約72時間のパワーリザーブを誇る。

ヴァシュロン・コンスタンタン トラディショナル・トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイスの裏蓋
ヴァシュロン・コンスタンタン トラディショナル・トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイスのマルタ十字をかたどったクラスプ
直径41mm、厚さはわずか11.07mmだ。18Kピンクゴールドのラウンドケースとラグのあいだに段差を設けることで、驚くほどよくなじんでいる。Watches & Wonders中の数あるアポイントメントのなかで、私はこの時計を腕に巻いたまま、ほかのヴァシュロンの時計の撮影に移ってしまうほどに。

ヴァシュロン・コンスタンタン トラディショナル・トゥールビヨン・レトログラード・デイト・オープンフェイスのリストショット
もう2度と犯さない失敗だ。とはいえ、最終的にどんな値段になるかは別として、すぐに手に入れることはできないと確信しているため、予定より少し長く待つことには何の抵抗もない。

ルイ・ヴィトン(LV)時計部門の指揮を執って間もないアルノー氏だが、すでに波紋を呼んでいる。

ジャン・アルノー氏は、ルイ・ヴィトンの時計部門でマーケティングおよび開発ディレクターを務めている。2021年からの短い任期のあいだに、彼は時計業界で大きな話題を呼び、業界をよりよい方向に導くために存在感を発揮すると同時に、決して過去を軽視していないことを証明した。

LV時計賞の設立や、ダニエル・ロートとジェラルド・ジェンタの両ブランドがラ・ファブリック・デュ・タン(ルイ・ヴィトン ウォッチが所有・運営するマニュファクチュール)を通じて復活するという最近の発表に、彼の手腕のほどを垣間見ることができるだろう。

A collection of 7 watches with a range of differently designed and colored dials and straps
それがアルノー氏の日常なのだ。そしてオフの日も時計のことを考え続けている。ルイ・ヴィトンスーパーコピー時計代引きまだ24歳だが、すでに本格的な時計コレクターであり、熟練した愛好家もうらやむような品々を所有する。

A watchmaker works diligently on hand-painting a watch dial
Wide exterior shot of a building with a sign to the right of it that reads “La Fabrique Du Temps Louis Vuitton”
ラ・ファブリック・デュ・タン ルイ・ヴィトン

Interior wide shot of a watchmaking studio with various watchmakers sitting at desks in an open floor plan office building
ルイ・ヴィトン ウォッチメイキングスタジオ

彼のコレクションは、LVの難解な旧作からアンティークのパテック、さらには特別なランゲまで、多岐にわたる。アルノーの収集哲学の核心に迫流この動画を、どうかご覧いただきたい。

さぁ、ジャン・アルノー氏とのTalking Wathesへようこそ。

ルイ・ヴィトン ワールドタイマー LV-I
The Louis Vuitton World Timer LV-I wristwatch on an ornately decorated background
ここにご紹介するのは、LVが初めて製造した量産モデルだ。アルノー氏が入社した時に手に入れたもので、数種類の複雑機構を備えたクォーツウォッチだ。彼が言うように、この時計はLVが時計を作るのをやめるきっかけになった時計だ(LVMHが存在する以前)。ムーブメントはIWC製で、今でもよく身につけている彼のコレクションの中核を担っている。

F.P.ジュルヌ オクタ リザーブ・ド・マルシェ(真鍮製ムーブメント プロトタイプ)
F.P. Journe watch with yellow dial on an ornate background
このジョルヌは見かけによらない。驚きは裏返したときにやってくる。この時計はプロトタイプで、3本しか存在しないことが判明している。アルノー氏は購入前にこの時計の真贋について不安を抱いていたが、フランソワ・ポール本人に時計を見せたところ、この時計が本物で特別なものであることがわかったそうだ。

ヴィンテージのパテック フィリップ Ref.10
このパテックはアルノー氏にとって非常に重要なものだ。1920年代のもので、この仕様でダイヤルにパテックの刻印があるのは私たちが知る限りではこの時計だけだ。HODINKEEでは多くのパテックを見ているが、これほど古いパテックを手に入れることは、まずない。

パテック フィリップ パーペチュアルカレンダー・クロノグラフ Ref.3970P 第2世代
これはアルノー氏にとって、“コロナ禍の掘り出し物”と呼ぶにふさわしいものだった。彼はある特定の仕様のRef.3970を探し求め、オンライン上の底なし沼の奥深くまで入っていった。この時計は特別な個体(そしてプラチナ製)だが、狩りのスリル、追跡のスリル、そしてアルノー氏が持つ真の収集本能を表している。

A.ランゲ&ゾーネ サクソニア フラッハ Ref.205.086
このランゲはアルノー氏がブランドを発見するきっかけとなったモデルだ。彼はこの時計を最も“風変わりな”ランゲと呼んでいる。また、この時計がカクテルウォッチであることを周囲が説得しても、彼はこれを日常使いできる時計だと考えている。

クレヨン エニウェア Only Watchモデル

もちろん、お待ちかねのOnly Watchのモデルも紹介しよう。このクレヨンのエニウェアは日の入りと日の出の時刻を表示する。モネの絵にインスパイアされたダイヤル(ただしクレヨンはどの絵かは明言していない)は、世界にひとつしかない超スペシャル作品のひとつだ。

ルイ・ヴィトン エスカル ワールドタイム ミニッツリピーター カスタム仕様

そして今回もまたひねりを加えたユニークピースを取り上げたい。ラ・ファブリック・デュ・タン(La Fabrique du Temps)のエンリコ・バルバジーニ(Enrico Barbasini)氏は、アルノー氏のためにこのLVワールドタイムの別仕様を作った。この時計の通常モデルは手描きだが、この時計はジュネーブ様式のエナメルで、オーナーのためにいくつかのムーブメントのアップデートが施されている。

パテック フィリップ “T2” モジュール式計時システム

最後にもっと大きなものをお届けしよう。パテックのT2モジュール式計時システムだ。アルノー氏の腕には似合わないが、パテックがクォーツ式計時装置に本格的に取り組んだことを象徴するモデルである。この時計はモジュール式で、ドイツの原子力発電所で数十年使用されていたものだ。近い将来、アルノー氏のオフィスや自宅に飾られることになるだろう。置き場所があればどこでも。

今年発表された“シャネル インターステラー カプセル コレクション”には、階段状のユニークなケースを持つモデル。

マドモアゼル シャネルが一生懸命に時刻を教えてくれる様子と記事の最後を読んで、どうか笑顔になって欲しい。

ダイヤのないオーソドックスなシャネル マドモアゼル J12 ラ パウザ。

今年発表された“シャネル インターステラー カプセル コレクション”には、階段状のユニークなケースを持つモデルや、ダイヤルを夜空に見立てて星をちりばめたものなど、J12からも多くの時計が登場した。そんななか、実は同カプセルコレクションに属していない、J12の名を持つ新作がこっそりと登場している。しかも公式ウェブサイトのどこにもそのアイテムのページがない。そんな不思議なモデルがマドモアゼル J12 ラ パウザだ。

同モデルはJ12の特徴であるブラックとホワイトの2カラーのみで展開。やはり最初に目に入るのは、一般的な針の代わりにセットされた、横を向いたマドモアゼル シャネルだろう。両腕がそれぞれ時分針となった2針ウォッチで、ちょっとわかりにくいもののどちらが時針・分針なのかは腕の長さで判断できる。

マドモアゼルは、ボーダーカットソーにフロントボタンをあしらったセーラーパンツ、そのパンツのカラーにあわせたハットという、マスキュリンな装いに身をつつんでいる。時間によっては両腕が重なったり、あるいはパンツの下に隠れてしまったりと、時間を確認するたびに違う表情を見せてくれる。

実は本作は、昨年発表されたマドモアゼル J12 ラ パウザのダイヤを廃したバージョンである。前作は宝石がセットされていたため1500万円近くとかわいくない値段だったが、今回は各145万2000円(税込)と比較的手が届きやすい。ダイヤ無しを望む声が多かったのだろうか? なんにせよきちんとオーソドックスなモデルも製造してくれたことに感謝したい。

ケース径は38mm、防水性能は200m、搭載ムーブメントはCal. 12.1と、レギュラーで展開しているJ12とスペックは同様。ケース素材はもちろんシャネルの十八番ともいえる、傷のつきにくい高耐性セラミックを採用している。ケニッシ社製ムーブメントCal. 12.1はパワーリザーブを約70時間を確保。ローターの丸い形状は、シャネル ウォッチメイキング クリエイション スタジオが描いた“完全な円”に基づいてデザインされている。

Cal. 12.1。ほかの38mmのJ12と同様のキャリバーだが、本モデルはカレンダーがなく、石数は28から27になっている。

ファースト・インプレッション
私は(まだまだ)時計初心者なので、モデル名のラ パウザにどんな意味が込められているのかを知らない。だからまずはこの由来を軽く調べてみることにした(マドモアゼルは理解しているつもり!)。

どうやら、1930年にマドモアゼル シャネルが完成させた、フランス・リヴィエラの“ラ パウザ”と呼ばれた別荘を指しているようだ。この建物はマドモアゼル自らが建物の考案から建設、内装のデザインまで行った。ラ パウザという名前はイタリア語で休憩を意味し、マドモアゼル シャネルはこのヴィラを休憩の地として20年以上利用したそうだ。1954年、彼女はラ パウザを売却するも、2015年にシャネルがこの土地を買収している。

ラ パウザの名を冠するアイテムは、その別荘にちなんだ(アイリスの)香り、色味に仕上げられたフレグランスやコスメなど、時計だけにとどまらない。土地を買い戻した経緯もあり、このメゾンがラ パウザというヴィラをどれだけ大切にしているかがわかる。

初作のマドモアゼル J12(完売)。©️CHANEL

ここで文字盤に配された彼女に戻るのだが、ボーダーカットソーにパンツというルックは、ラ パウザで撮影された写真の中のマドモアゼル シャネル自身から着想を得ているという。なお初作のマドモアゼル J12(ダイヤはない)はシャネルのスーツとカンカン帽に、ヒールを履いたマドモアゼルがデザインされている。これはきっと、パリで過ごす彼女を描いていたのだろう。

さて、時計自体についても触れておこう。質感や触り心地、重さ、装着感についてはレギュラーのJ12と同じで、そこそこの重量感があり、腕につけるだけで存在感を放つ。そしてシャネルはただ単に文字盤にロゴを入れただけの時計を作っているのではなく、ムッシュー ドゥ シャネルやボーイフレンドのハイエンドコレクションに至るまで、本格的ウォッチメイキングに取り組んでいるブランドである。J12も一見普通のファッションウォッチに思えるが、美しくポリッシュされたケース、ケニッシ社製の信頼性の高いムーブメント、200mの防水性など、そのウォッチメイキングのレベルの高さは時計愛好家も納得のいくものだと思っている。

初めてみたときに気になったのは視認性だ。マドモアゼル シャネルが文字盤の上に立っていて、しかも5・6時位置はインデックスすらないときた。分針(右腕)は一番上に設置されているからいいとして、5~6時の計時はあやふやになるのでは? と思った。結論からいうと4時30分から5時30分前くらいまでは正直わかりずらかった。だがここでラ パウザの意味を振り返ろう(記事をスクロールして少し戻って)。そう、あくまでもマドモアゼルはリラックスするためにラ パウザというヴィラを建てたのだから、せかせかと時間に追われることなく(たった1時間だが)その時間帯は過ごそうではないか。そう思うことにした。

そして最後は、時計自体とは関係ないのだが、時計をつけてもらったエディターの佐藤がこの日着てきたカットソーも彼女と同じボーダーだったため(打ち合わせはしていないけど、撮影のために選んできたのかな?)シンクロしたリストショットが撮れた話で締めくくりたい。何がいいたいかというと、マドモアゼル シャネルと一緒のスタイリングで合わせるのも断然アリだということ!

基本情報
ブランド: シャネル(Chanel)
モデル名: マドモアゼル J12 ラ パウザ(Mademoiselle J12 La Pausa)
型番: H7609(ブラック)、H7481(ホワイト)

直径: 38mm
ケース素材: 高耐性セラミック×SS
文字盤: ブラックラッカー、ホワイトラッカー、ともにマドモアゼル シャネルのイラスト
インデックス: アラビア数字
防水性能: 200m
ストラップ/ブレスレット: 高耐性セラミックブレスレット、SS製3重折りたたみ式バックル

ムーブメント情報
キャリバー: 12.1
機能: 時・分表示
パワーリザーブ: 約70時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 27

価格 & 発売時期
価格: 各145万2000円(税込)

今年開催されるOnly Watchオークションのハイライトをいくつか紹介しよう。

オーデマ ピゲ ロイヤル オーク フライング トゥールビヨン オープンワーク Only Watch エディション
まずはオーデマ ピゲからだ。フライング トゥールビヨン オープンワークは、ロイヤル オークにセラミックケース、そしてオープンワーク(スケルトン)ムーブメントという、APが得意とするいくつかの要素を取り入れたモデルである。今年のOnly Watchモデルは、41mmのケースにホワイトセラミックのブレスレットを備えたもので、メインプレートとブリッジを鮮やかなブルーで仕上げたオープンワークムーブメントの自社製Cal.2972を搭載している。またAPは、ホワイトゴールドでできたアワーマーカーと針のほか、22Kゴールドの自動巻きローターも同じブルーとロジウムの色調で彩るなど、この特別なロイヤル オークムーブメントの装飾をアピールしている。

エスティメート: 30万~35万スイスフラン(日本円で約4830万円~5635万円)

ブルガリ オクト フィニッシモ トゥールビヨン オートマティック マーブル
アルファベット順に62本のロットを見ていくと、次にブルガリがOnly Watchのためのスペシャルなオクト フィニッシモ トゥールビヨン オートマティック マーブルを製作したことがわかる。一般的な40mmのDLC処理されたチタン製ケースとブレスレットは、ヴェルデアルピのグリーンマーブルの層で覆われている(ケースの厚さはわずか0.5mm、ブレスレットの厚さは0.4mmだ)。もちろん、文字盤にも薄い緑色のマーブルの層がある。6時位置の大理石からは、世界で最も薄い手巻き式フライングトゥールビヨン、BVL268のフライングトゥールビヨンが見える。

ブルガリによると、この大理石はスイスと、ブルガリの故郷であるイタリアをアルプス山脈を通じて結ぶ自然の通り道、アオスタ渓谷で採れたものだという。この大理石はローマの宝石商と、記念碑や大理石の遺跡があるローマ帝国との歴史的なつながりを意味している。ローマといえば、このロットに当選すると“郷に入れば郷に従え!(when in Rome!)”ということわざにならうように、ローマにあるブルガリの最新ホテルに1泊できる権利も得られるとのこと。

F.P.ジュルヌ クロノメーター ブルー フルティフ
F.P.ジュルヌはいつもOnly Watchのために新しいムーブメントを製作している。そして今年も同様のことをした。今年は18Kローズゴールド製の新型手巻きCal.1522を搭載したクロノメーター ブルー フルティフである。パワーリザーブインジケーターとムーンフェイズがムーブメントの裏側に配され、シースルーバックを通してのみそれを見ることができる。

時計本体のサイズは42mmで、オールタンタルでできたケースとブレスレットが特徴だ。文字盤が真正面を向いていないと時刻が読みにくいことからこの名がついた。青いエナメルの文字盤には、光の反射でしか見えないフロスト加工を施した数字があり、“持ち主だけ”が楽しめるようになっている。

エスティメート: 20万~40万スイスフラン(日本円で約3220万円~6440万円)

ジェラルド・ジェンタ
ミシェル・ナバス(Michel Navas)氏とエンリコ・バルバジーニ(Enrico Barbasini)氏の指導の下、ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトンで復活を果たしたジェラルド・ジェンタブランドが、今回初めてOnly Watchに参加する。ディズニーの創業100周年と、ジェンタが自身の名を冠した時計を初めて製作してから50周年という節目に合わせて、ブランドはジェンタのシグネチャーである八角形ケースに入ったミニッツリピーター機能を搭載したミッキーマウスウォッチを発表した。シャンルヴェ・エナメルの文字盤には、片手にバースデーケーキを持ったミッキーマウスがエナメルで描かれている。これはディズニーの誕生日とOnly Watchの第10作目にちなんだものだ。

40mmのWG製ケースには、ラ・ファブリク・デュ・タンが開発した新型Cal.GG-001が収められている。復活したジェンタブランドによると、これはデザイナーがスケッチを描いていたものの実際には製作されなかった時計であり、ジェンタの特徴であるミニッツリピーターと、ミッキーマウスのアニメーションが描かれたレトログラードが初めて一体となった時計だという。

エスティメート: 35万~50万スイスフラン(日本円で約5635万円~8055万円)

タグ・ホイヤー モナコ スプリットセコンド フォー
タグ・ホイヤーは今年のOnly Watchエディションにて、ブランド初となる機械式スプリットセコンドクロノグラフをおなじみのモナコケースに収めたモデルを発表した。通常のモナコケースとは異なり、テクスチャー加工を施したチタニウム製のケースも、タグがこのプロジェクトのために開発した新素材である。内部には自社製自動巻きスプリットセコンドCal.TH81-00を搭載。サファイア製のシースルーバックと、インダイヤルがチタン製のブリッジで吊り下げられているサファイア製ダイヤルの両方から鑑賞することができる。

ブルガリのOnly Watchと同様、このモナココレクションにも時計以外の権利が付属しており、落札者は2024年5月に開催されるモナコF1グランプリに、タグ・ホイヤーとともに招待されるという特典付きだ。

エスティメート: 15万~30万スイスフラン(日本円で約2415万円~4830万円)

チューダー プリンス クロノグラフ ワン
チューダーはいつもOnly Watchに現れる。2023年、ブランドは90年代のクラシックなビッグ ブロック チューダー クロノグラフを再解釈した18金無垢ケースに、新しいクロノグラフキャリバーを乗せたプリンス クロノグラフ ワンを発表。ブランドはコラムホイール、シリコン製ヒゲゼンマイ、約70時間のパワーリザーブを備えたこの新しいプロトタイプキャリバーにMT59XXと名付けた。

チューダーのほかのOnly Watchモデルと同様、その説明文はチューダー愛好家の熱狂的な夢のようであり、間違いなくこれは数十万スイスフランで販売されることになるだろう。チューダーのOnly Watchは数人の有名なコレクターが、ポケモンテーマの“みんなまとめてゲットだぜ(gotta-catch-‘em-all)”という激しい精神のように、ひとつひとつOnly Watchを奪い合うことで知られている。ここで掲載された微々たるエスティメートは、あなたや私のような謙虚なブラックベイ着用者を挑発するためだけのものなのだ。

エスティメート: 2万5000~3万5000スイスフラン(日本円で約405万円~565万円)

シルヴァン・ピノー Only Watch オリジン
シルヴァン・ピノーは、スイスでいま最も勢いのある独立時計師のひとりである。彼が手掛けたオリジンは2022年のGPHGでオロロジカル・レヴェレイション賞を受賞。そして今回のOnly Watch 2023のためにユニークオリジンを製作した。彼はオリジンを手に取り、ライトブルーとシルバーのツートーンカラーのギヨシェ文字盤を追加。これらをすべて40mmのスティール製ケースに収めた。このユニークな文字盤は、ピノーにインスピレーションを与えてきたトラディショナルな時計製造の要素を現代的にアレンジした時計に、クールでモダンな効果をもたらしながら、オリジンにしっくりとなじんでいる。

エスティメート: 7万~10万スイスフラン(日本円で約1130万円~1615万円)

ティファニー&リシャール・ミル ネックレスウォッチ
リシャール・ミル ネックレスウォッチ
最後に、ふたり一組となるリシャール・ミルとティファニーは、Only Watch 2023のために時計とネックレスをつくりあげた。リシャール・ミルは数世紀前にスイスで発見されたシャーマン教の遺物である、“タリスマン・オリジン”にちなんだRMS14を製作。このネックレスは、スイスのブリアウッド(ブライアという堅い木質の根から作られる木材)、ゴールド、チタン、ロードナイトのネックレスに、RMの特徴であるトノーをネックレスで通したものである。これのプレス資料は時計のリリースというより神秘的な呪文のように読めるが、ユニークなリシャール・ミルに何を期待するのだろう?

ティファニー ネックレスウォッチ
一方ティファニーはバード・オン・ア・ロックブローチを、Only Watch向けに再解釈して“バード・オン・ア・ロック・メカニカル・ペンダント・ウォッチ”として製作。(みんなも)私と同じようにティファニーのブローチのことをよく知らないかもしれないが、目を閉じて裕福な友人の祖母を思い浮かべてみると、そのおばあさんはおそらくバード・オン・ア・ロックをつけているだろう。文字盤だけでも461個のダイヤモンドがあしらわれており、時計というよりどちらかというと宝飾品である。しかし、その華麗な文字盤の下には手巻きムーブメントが搭載されているのだ。

リシャール・ミル / Lot 51。エスティメート: 60万~80万スイスフラン(日本円で約9660万円~1億2890万円)
ティファニー / Lot 56。エスティメート: 35万~50万スイスフラン(日本円で約5630万円~8055万円)

不明: パテック フィリップ&レジェップ・レジェピ
パテック フィリップやレジェップ・レジェピなど、いくつかのブランドは提供を予告するに留めている。

まずパテックからは、次のようなヒントが提供された。来たる11月のフィリップ・スターン(Philippe Stern)氏85歳の誕生日に向けて、ティエリー(Thierry)氏とパテック フィリップは、30本限定の腕時計を製作するとのことだ。“まったく新しいムーブメントを搭載した、お気に入りのグランドコンプリケーションです。このムーブメントはこのトリビュートウォッチのためだけに設計・製造されたもので、2度と使用されることはありません(Only Watch 2023より)”。この限定モデルの最初の時計はOnly Watchのデザインでまず生産され、11月5日にオークションにかけられる。

一方、独立時計師のレジェップ・レジェピ氏は、自身のOnly Watchモデルに“クロノメーター アンチマグネティック”という名称をつけた。彼によると、本作は自身の作品の特徴をすべて備えながらも、手仕上げのムーブメントを囲むファラデーケージ(外部の電界を遮蔽する導体でできた器)によって磁気から保護された時計になるという。文字盤もまた、ヴィンテージの“サイエンティフィックダイヤル”からインスピレーションを得ており、時計の目的である耐磁性をさりげなく表現している。

オークションで最も期待されるふたつの時計であることは間違いなく、詳細が発表され次第またお伝えしよう。

パテック フィリップ / Lot 44。エスティメート: 未定
レジェップ・レジェピ / Lot 50。エスティメート: 10万~15万スイスフラン(日本円で約1615万円~2415万円)

この最初のOnly Watch発表で取り上げるロットを10にしぼるのは骨が折れる。どのロットにも興味深いストーリーが隠されているからだ。ただ幸運なことに、これらの時計が11月のクリスティーズ・ジュネーブで発売される前に、少なくとも私たちはいくつかの詳細を11月までに見ることができる。メインイベントが近づくにつれ、さらに詳しく紹介していくので期待していて欲しい。

シリーズの第3シーズンとなる“Watches in the Wild: アメリカ時計大紀行”を公開した。

エピソード1では、ウォルサムに代表されるアメリカ時計製造の黎明期に注目し、ニューイングランド地方を取材した。しかし、それはほんの始まりに過ぎなかった。

今回お届けするエピソード2では、時計製造の聖地、ペンシルベニア州ランカスターとその周辺地域を取り上げた。まず冒頭では20世紀初頭のペンシルベニア州の中心地を走る列車に乗り、標準時確立の背景を紹介している。鉄道が懐中時計と呼ぶ小さな道具で時間を認識し、計測し、理解する方法において極めて重要な役割を果たしていた時代の物語だ。

そこから何を隠そう、アパート(住居)に改装されたハミルトンの旧工場を探検する。それにしてもふたつの巨大な時計塔を含め、この建物の歴史の大部分を維持管理している建物管理者には敬意を表したい。この建物周辺を歩いていると、今でも時を刻む音が聞こえてきそうだ。

この旅に深みを持たせるべく我々は全米古典時計協会(NAWCC)を訪れ、敷地内にある印象的な博物館とアーカイブのキュレーションツアーを体験することにした。

そしてアメリカの時計製造が今日まで息づいていることを証明するマイクロブランド、RGM ウォッチ(RGM Watches)の経営者であり、その名を冠したローランド・G・マーフィーという特別な人物を訪ねることですべてが締めくくられる。

これらすべてによって我々はアメリカ時計製造の物語に対する理解をさらに深めることとなったが、これで終わりではない。この最新作を見終えたら、次回のジェームズ・ステイシーとコール・ペニントンによる西海岸の旅に期待して欲しい。